広島県呉市のパーソナルジムWiSPでバッティング動作を確認している様子

投球・バッティングでは、筋力だけでなく「力を伝える順番」も重要です。

「もっと捻れば、球速やスイングスピードは上がる?」

野球では「腰を先に回す」「上半身を残す」「捻転差を作る」といった言葉をよく耳にします。

しかし、身体を大きく捻れば、それだけ速いボールやスイングにつながるわけではありません。

こんな疑問がある方へ

✓ 筋力はあるのに球速が伸びない
✓ スイングを速くするには何を鍛えればいい?
✓ 「捻転差」がなぜ必要なのか分からない
✓ 「下半身を使う」の意味がよく分からない

まず結論|野球のスピードを支える3つのポイント

大切なのは「大きく捻ること」ではありません。


① 力を作る → ② 順番よく伝える → ③ 素早く切り返す

この流れを、自分の身体でコントロールできることが重要です。

⚡
SSC

伸ばされた筋・腱を
素早く切り返す

↻
捻転差

骨盤と胸郭の
回旋タイミング

→
連動

下半身から上半身へ
力をつなげる

腕だけでは速いボール・スイングは作れない

投球やバッティングでは、身体の一部分だけで力を出すのではなく、
身体全体を使って力を末端へ伝えていきます。

身体の中を力が伝わるイメージ

01

地面

反力を受ける
→
02

下半身

力を作る
→
03

骨盤

回旋を開始
→
04

体幹

回旋を加速
→
05

腕・バット

速度へつなぐ
ここで大切なのは「順番」
すべてが同時に動くのではなく、身体の中心から末端へ連動することで速度につなげていきます。

SSCとは?素早く力を出すための仕組み

SSCはStretch-Shortening Cycle(伸張-短縮サイクル)の略です。

専門用語ですが、仕組みはシンプルです。

↔

① 伸ばされる

筋・腱に素早く
伸張刺激が加わる

⇄

② 切り返す

長く止まらず
素早く方向を変える

⚡

③ 力を出す

筋が短縮して
素早い力発揮へ

イメージしやすいのはジャンプ
一度しゃがみ込んでからすぐに跳ぶ動きも、SSCを利用した代表的な動作です。
SSCと捻転差は同じものではありません。
SSCは筋・腱が「伸ばされる→切り返す→短縮する」仕組みです。
捻転差は、骨盤と肩・胸郭の回旋の差を表します。

「捻転差」は大きければ良い?

結論は、大きければ大きいほど良いわけではありません。

一般に野球で「捻転差」と呼ばれるものは、
骨盤と肩・胸郭の向きに生まれる差を指します。

捻転差が生まれるイメージ

先に動く
骨盤 ↻

下半身から回旋が始まる

少し遅れる
胸郭 ↻

胸郭・肩が少し遅れて回る

↓ この回旋の差が「捻転差」

重要なのは「角度」より「コントロール」
自分の可動域の中で、骨盤と体幹を適切なタイミングで動かせることが大切です。

研究データ|ピッチングでは何が分かっている?

2023年の研究では、高校・大学の男性投手29名を対象に、
骨盤・体幹の動きと球速の関係が調べられました。

29名
高校・大学の
男性投手
33.5m/s
平均球速
約121km/h
50±12°
踏み込み足接地時の
平均捻転差

研究モデルが説明した「ばらつき」

最大体幹回旋速度 → 球速
25%

骨盤速度・捻転差など → 体幹回旋速度
55%

※25%・55%は「その割合だけ球速が上がる」という意味ではありません。
研究モデルがデータのばらつきを説明した割合です。

50°を目標にするわけではありません
50±12°はこの研究対象者の平均値です。
「理想の捻転差=50°」という意味ではありません。

では、人数が多い研究では?

2026年の研究では、NCAA Division Iの投手335名の実戦動作が分析されました。

335名
大学投手
+
球速との正の関連
弱い
関連は小さく個人差あり
つまり:
「捻転差を増やせば球速が上がる」とは言えません。
選手ごとに、適切な動き方を確認する必要があります。

バッティングではどうなの?

打撃でも、骨盤と体幹の回旋を連動させながら、
最後にバットへ速度を伝えていきます。

01
準備
テイクバック
→ 02
下半身
動き始める
→ 03
骨盤
回旋を先行
→ 04
体幹
回旋を加速
→ 05
バット
速度へ

2026年・実戦スイングの研究

247名
NCAA Division I打者
3,958
解析されたスイング
+0.05m/s
自身の平均より捻転差が
1°大きかった場合の関連
「1°増やせば必ず0.05m/s速くなる」ではありません
研究で確認されたのは小さな関連です。
実際には選手によって関係の大きさが異なります。

では、実際に何をチェックする?

WiSPでは「捻転差が何度あるか」だけではなく、
大きく3つに分けて確認します。

CHECK 01
可動性

股関節や胸郭が、必要な範囲で無理なく動くか。

CHECK 02
安定性

回旋中でも軸や姿勢をコントロールできるか。

CHECK 03
タイミング

下半身→骨盤→体幹→上肢の順番が合っているか。

トレーニングでは何を高める?

POWER
メディシンボールスロー

下半身から体幹へ力を伝え、素早くリリースする。

TIMING
ステップ&スロー

踏み込みから体幹・腕へつなぐ順番を練習する。

SPEED
スピードトレーニング

フォームを保ったまま、素早く動く能力を高める。

CONTROL
回旋・減速トレーニング

回すだけではなく、止める・制御する能力も高める。

筋力
×
スピード
×
可動性
×
タイミング

まとめ|「捻る」より「つなげる」

球速やスイングスピードを高めるために重要なのは、
捻転差だけを大きくすることではありません。

✓ 下半身で力を作る
✓ 骨盤と体幹を順番よく動かす
✓ SSCを利用して素早く切り返す
✓ 可動性・安定性・タイミングを個別に確認する


身体全体をつなげて使えることが、パフォーマンス向上の土台になります。

参考文献

Orishimo KF, et al.
Role of Pelvis and Trunk Biomechanics in Generating Ball Velocity in Baseball Pitching.
J Strength Cond Res. 2023;37(3):623-628.

Jump IP, et al.
Influence of Hip-Shoulder Separation on Pitch Velocity in College Baseball Pitchers.
J Biomech. 2026;195:113117.

Hoechstetter A, et al.
The relationship between hip-shoulder separation angle and bat speed in Division I batters.
J Biomech. 2026;207:113550.

National Strength and Conditioning Association.
Basics of Strength and Conditioning.

FROM KNOWLEDGE TO ACTION

身体を知ることから、
次の一歩へ。

記事で得た知識も、身体の状態や目的によって活かし方は変わります。 WiSPでは、今の身体や動きを確認しながら、一人ひとりに合った方法を一緒に考えていきます。

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