年齢を重ねると誰でも筋肉は少しずつ減っていきます。
特に女性はホルモンの変化によって筋肉や骨が弱くなりやすく、転倒や骨折のリスクが高まります。
これが続くと、歩く・立つといった基本動作に支障が出て「ロコモティブシンドローム(運動器症候群)」につながることがあります。
これを防ぐためには筋力トレーニングが効果的です。
ただし、方法を誤るとケガや体調不良につながる可能性もあるため、安全に継続することが何より大切です。
◆ 呼吸を止めるリスク ― バルサルバ法について
筋トレ中にありがちなのが、力を入れるときに息を止めてしまうことです。
これは「バルサルバ法」と呼ばれ、体幹を一瞬で安定させる効果がある反面、血圧を急激に上昇させ、心臓や脳の血管に大きな負担をかけます。
そのため、高齢者や健康維持を目的とする方にとっては大きなリスクとなります。
安全に行うためには、「力を入れるときに吐き、戻すときに吸う」呼吸リズムを守ることが重要です。
呼吸を止めないだけで、トレーニング中の体への負担を大幅に減らすことができます。
◆ ロコモ予防に効果的なトレーニング
ロコモ予防のための筋トレは、「筋肉を大きくする」ことではなく、「日常動作をスムーズに行える筋力とバランス力」を育てることが目的です。
1. 下半身の筋力強化
立ち上がる、歩く、階段をのぼるといった日常動作の基盤を支える筋肉を鍛えます。
- チェアスクワット:椅子に腰を下ろし、立ち上がる動作を繰り返す。膝や腰に負担が少なく安全。
- ヒップリフト:仰向けでお尻を持ち上げる。お尻や太もも裏を中心に強化できる。
- カーフレイズ:立ったままかかとを上げ下げする。ふくらはぎを鍛え、歩行の安定性を高める。
2. 体幹の安定性を養う
体幹が弱いと姿勢が崩れやすく、転倒の原因になります。
- デッドバグ:仰向けで手足を交互に伸ばす。腰を床に押しつける意識が大切。
- バードドッグ:四つ這いで片手と反対の脚を同時に伸ばす。体幹とバランスを同時に鍛えられる。
3. バランス能力を高める
転倒予防には欠かせない要素です。
- 片脚立ち:壁や椅子につかまりながら片脚で立つ。安全を確保しつつ実施。
- ステップ運動:前後左右に一歩ずつ足を踏み出す。難易度を調整しやすい。
4. 股関節まわりの柔軟性
股関節が硬いと歩幅が小さくなり、つまずきやすくなります。
- 大殿筋ストレッチ:仰向けで片膝を胸に引き寄せる。お尻の奥が伸びる。
- 梨状筋ストレッチ:仰向けで片脚を「4の字」に組み、膝を胸に近づける。股関節の奥が伸びる。
- 内転筋ストレッチ:両脚を広げて“ハの字”を作り、お尻を後ろに引く。太ももの内側から股関節の付け根が心地よく伸びる。
◆ トレーニングの進め方
- 週2〜3回を目安に、休養日を挟みながら継続。
- 10〜15回で「少しきつい」と感じる負荷が適切。無理に回数や重量を増やさない。
- 呼吸を止めないことを徹底する。
- 痛みが出る動作は避ける。フォームを優先し、負担の少ない動きを心がける。
- 少しずつ負荷を上げることを意識し、急なレベルアップは避ける。
女性の場合、「筋肉がつきすぎてゴツくなるのでは」と不安に感じることもありますが、女性はホルモンの関係で過度な筋肥大は起こりにくく、むしろ体が引き締まり、姿勢や動作が安定する効果が期待できます。
◆ 食事と休養も忘れずに
筋肉をつけるためには運動だけでなく、栄養と休養が不可欠です。
特にたんぱく質を意識して摂取し、肉・魚・卵・大豆製品などをバランスよく取り入れましょう。
加えて、カルシウムやビタミンDは骨の健康維持に役立ちます。十分な睡眠をとることも、筋肉や関節の回復を助けます。
まとめ
高齢による筋力低下やロコモティブシンドロームは、健康寿命を短くする要因の一つです。筋力トレーニングはその予防に有効ですが、やり方を誤るとリスクになります。
特に 呼吸を止めてしまう(バルサルバ法)ことは血圧を急激に上げて危険 です。
安全のためには「正しいフォーム」「呼吸を止めないこと」「無理のない負荷」を守り、継続して取り組むことが大切です。
無理をせずコツコツと積み重ねることが、将来も自分の足で歩き続ける力につながります。