運動を始めたばかりの方は、トレーニングやストレッチをしても「思ったように筋肉が動かない」「フォームがうまく決まらない」と感じることがよくあります。

これは決して能力の問題ではなく、脳と体の連携がまだ発達途中だからです。

運動の感覚をスムーズに掴むには、科学的な理由を理解し、段階的に体を慣らしていくことが重要です。

1. 神経系がまだ未発達だから

脳から筋肉への指令がスムーズでない

運動を行う際、脳は「どの筋肉をどの順番でどれくらい動かすか」を指令します。

運動初心者の場合、この運動神経伝達がまだスムーズでないため、狙った筋肉をうまく使えず、動作がぎこちなくなります。

例えばスクワットで太ももやお尻の筋肉を意識していても、初めは大腿前部や腰ばかりに力が入ってしまうことがあります。

これは脳と筋肉のコミュニケーションが十分に構築されていないためです。

2. 動作パターンがまだ学習されていない

日常生活で使わない動きは慣れていない

スポーツや筋トレには、日常生活ではあまり使わない動作が多く含まれます。

例えば、腕を斜めに上げながら体幹を回す動きや、片足でのバランス動作などです。

脳は「動かし方のプログラム」をまだ持っていないため、正しいフォームで動かすことが難しくなります。

最初はフォームが崩れやすく、疲れやすいのもこのためです。

3. 感覚フィードバックが不足している

固有受容感覚が慣れていない

運動を効率よく行うためには、筋肉や関節の位置・動きを脳が正確に認識する必要があります。

この感覚を「固有受容感覚」と呼びます。

初心者は、この感覚がまだ慣れていないため、正しい姿勢や筋肉の効かせ方の感覚がぼやけやすいのです。

例えば、プランクやスクワットでお腹やお尻に力を入れているつもりでも、肩や腰に力が逃げてしまうことがあります。

4. 感覚を掴むためのポイント

① ゆっくり丁寧に動く

最初から速く動かすと、筋肉と脳の連携が追いつかず、効かせたい筋肉に刺激が入りません。

ゆっくり行うことで、脳が筋肉の動きを正確に学習できます。

② 部分的に意識する

全身を一度に意識するのは初心者には難しいため、まずは「太ももだけ」「肩甲骨だけ」など、ターゲットを絞ることが効果的です。

③ フィードバックを使う

鏡を見ながらフォームを確認したり、トレーナーにチェックしてもらうことで、脳に正しい動作情報を送ることができます。

これにより、固有受容感覚が早く鍛えられ、効率的に運動の感覚を掴めます。

5. 継続が鍵

最初は感覚が掴めず、ぎこちなさを感じるのは自然なことです。

脳と筋肉の連携は、繰り返すことで少しずつ強化されます。

毎回の練習で「どの筋肉が働いているか」を意識し、フォームを丁寧に行うことで、運動の感覚は確実に身についていきます。

6. まとめ

  • 運動初心者が動作をうまく行えないのは、神経系の発達不足・動作パターン未学習・感覚フィードバック不足が原因
  • ゆっくり丁寧に動く、意識する筋肉を絞る、鏡や指導を活用することで感覚は掴める
  • 継続と反復により、脳と筋肉の連携が強化され、フォームが安定し、効率的に筋肉を使えるようになる

運動の感覚は「筋肉の強さ」だけでなく、脳と体の協調性で決まります。

焦らず段階的に学習することが、ケガなく効率的に体を鍛える近道です。