正座は日本文化において伝統的な座り方ですが、長時間続けることで体にさまざまな影響が出ることがあります。

普段はあまり意識しないかもしれませんが、血流・神経・関節・筋肉など、体の多くの部分に負担がかかります。

ここでは、医学的・運動生理学的な観点から、正座のリスクと注意点を解説します。

1. 足のしびれと神経への影響

正座を長時間すると、膝の裏やふくらはぎ、足先にしびれを感じることがあります。

これは、坐骨神経や脛骨神経、腓骨神経などの末梢神経が圧迫されるためです。

神経が圧迫されると、次のような現象が起こります。

  • 足先の感覚が鈍くなる
  • ピリピリとした「しびれ」を感じる
  • 動かしにくさや力が入りにくくなる

専門的には、長時間の神経圧迫は一時的な伝導障害を引き起こし、極端な場合には神経障害のリスクが高まるとされています。

2. 血流障害と循環への影響

正座では、膝や足首の角度により下肢の血管が圧迫され、血流が低下します。

血流が滞ると次のような現象が起きます。

  • 足の冷えやむくみ
  • 血管内圧の上昇による静脈瘤のリスク増加
  • 長時間座ることで心拍数や血圧に影響が出ることも

特に高齢者や血管が弱い方では、正座による血流低下が長時間続くと、循環器系への負担が大きくなります。

3. 関節への負担

膝や足首の関節も正座によって強い負荷を受けます。

  • 膝関節:曲げた角度で圧迫が集中し、軟骨や半月板に負担
  • 足首:底屈姿勢が続くことで関節包や靭帯にストレス

長期的に繰り返すと、関節炎や変形性膝関節症のリスクが高まる可能性があります。

また、足首に捻挫などの怪我がある場合は特に注意が必要です。

普段正座に慣れていても、捻挫した状態で正座をすると症状を悪化させる可能性があります。

足首を負傷しているときは、正座を控えることが安全です。

4. 筋肉や腱への影響

正座は一見静的に見えますが、太もも前面(大腿四頭筋)やふくらはぎ、足の裏の筋肉に常に緊張がかかっています。

この状態が続くと:

  • 筋肉の硬直やこわばり
  • 足のだるさや疲労の蓄積
  • 長期的には柔軟性低下や動作制限

筋肉が硬直すると、立ち上がったときに血流が急に戻り、稀にめまいや立ちくらみを起こすこともあります。

5. 神経・血管・筋肉の三重リスク

正座のリスクは神経・血管・筋肉が同時に影響を受けることです。

例えば、膝裏の神経を圧迫しつつ、血流が低下し、筋肉が硬直すると、しびれや痛みが強く出やすくなります。

特に高齢者や持病がある方では、短時間でも症状が強く出る場合があります。

6. 正座を安全に行うためのポイント

(1) 時間を区切る

長時間連続で正座せず、15〜20分ごとに立ち上がって足を伸ばすことで血流を回復させます。

(2) クッションや座布団を活用

膝下やかかとにクッションを入れると、神経や血管の圧迫を軽減できます。

(3) 足首の怪我時は正座を控える

捻挫などで足首に炎症や痛みがある場合、普段正座している習慣があっても、正座をすると症状が悪化することがあります。

怪我の回復を優先し、安全な姿勢を取ることが重要です。

7. まとめ

正座は日本文化に根付いた座り方ですが、長時間続けると神経圧迫・血流低下・筋肉硬直・関節負担など、体に多方面の影響を及ぼします。

  • 足のしびれやピリピリ感が出たら、すぐに姿勢を変える
  • 血流を促すために立ち上がって足を動かす
  • クッションや座り方の工夫で負担を軽減する
  • 足首に捻挫などの怪我がある場合は正座を控える

これらの工夫を取り入れることで、正座によるリスクを大幅に減らしながら、文化的習慣も安全に楽しむことができます。