陸上競技では、スプリントや跳躍の際にハムストリングやアキレス腱に大きな負荷がかかります。
特に学生期は筋肉や腱がまだ成長段階にあり、柔軟性や神経系の協調が不十分だと、肉離れや腱損傷のリスクが高まります。
安全に競技力を高めるためには、柔軟性・筋力・神経系協調を総合的に鍛えることが重要です。
ハムストリングやアキレス腱が損傷しやすい理由
ハムストリング肉離れは、スプリント終盤や加速期に多く発生します。主な要因は以下です。
* 急激な筋伸張に対する筋力不足
* 股関節や膝関節の可動域不足
* 反復スプリントでの筋疲労蓄積
アキレス腱損傷は、ジャンプやダッシュでの腱への急激な負荷が原因です。
* 足首やふくらはぎの柔軟性不足
* 下腿三頭筋の筋力低下
* 神経系によるタイミング制御の乱れ
柔軟性の重要性と定番ドリルの活用
柔軟性は、筋腱が急激な伸張ストレスに耐えるための「クッション」となります。
* 動的ストレッチ
- レッグスイングやヒップヒンジで股関節・ハムストリングの可動域を広げる
- ウォームアップの段階で筋腱を温める
* インチワーム
- 前屈姿勢から手で歩きながら前進する動作
- ハムストリング・肩・体幹を動的に伸ばし、股関節屈曲や前傾動作の可動域を高める
* 静的ストレッチ
- ハムストリングやふくらはぎを20〜30秒程度保持し、柔軟性を維持
柔軟性が不足すると、スプリント終盤や着地時に筋腱が過伸展しやすく、損傷リスクが増します。
筋力で負荷に耐える
筋力は、伸張や衝撃を受け流す力として重要です。学生期は筋力バランスが偏りやすく、怪我のリスクが高まります。
* ハムストリング:ノルディックハムストリング、デッドリフト
- 加速期の膝伸展抵抗に耐える力を強化
* 下腿三頭筋(アキレス腱周囲):カーフレイズ、ジャンピングスクワット
- 着地衝撃を吸収
* 大腿四頭筋とのバランス
- 前後筋力比を意識し、ハムストリングへの過負荷を防ぐ
神経系の協調と俊敏性
柔軟性や筋力があっても、タイミングよく筋肉を収縮・緩める神経系協調が不足すると怪我リスクが高まります。
* スプリントドリルやラダードリル
- 足のステップと体幹を連動させる
* アンクルホップ
- 足首だけで跳ぶドリル
- 足首の素早い伸展・屈曲を鍛え、神経系の反応速度を向上
- 着地衝撃を効率的に吸収し、アキレス腱損傷を防ぐ
* プライオメトリクス
- 反射神経や伸張反射を活用し、筋腱損傷の予防
安全にパフォーマンスを向上させるポイント
* ウォームアップで筋腱を温め刺激を加えて、動的ストレッチやインチワームを取り入れる
* ハムストリング・下腿三頭筋を中心に筋力を強化
* 神経系協調を意識したドリルでタイミング制御を向上
* 疲労や違和感がある場合は休養を取り、無理な負荷を避ける
* 成長期の学生は負荷量を段階的に上げる
まとめ
学生陸上では、ハムストリング肉離れやアキレス腱損傷は、柔軟性・筋力・神経系協調の不足によって起こりやすくなります。
適切なウォームアップと定番ドリルの活用、筋力強化、神経系協調トレーニングを組み合わせることで、怪我を予防しながらスプリントや跳躍能力を高めることが可能です。
特に、インチワームやアンクルホップは、動的柔軟性の向上や神経系協調の改善に非常に有効で、安全にパフォーマンスを高めるために積極的に取り入れることが推奨されます。