硬式テニスのサーブは、単に腕の力で打つ動作ではありません。
地面を踏み込んだ力を股関節から体幹、胸や背中、肩、腕へと流れるようにつなげる「運動連鎖」によって、初めて大きなスピードが生まれます。
特に肩・胸・背筋・体幹のつながりを最大化することが、サーブ速度を伸ばすカギとなります。
サーブに必要な「力の流れ」
サーブ動作は、下半身で生んだ力を上半身に伝え、最後にラケットを加速させる一連の流れで構成されています。
この流れのどこかが途切れると、速度が出ないばかりか肩や肘に余計な負担がかかります。トップ選手との差は力の強さではなく「流れをどれだけ途切れさせずにつなげられるか」にあります。
トロフィーポジションの重要性
サーブの中で特に大切なのが「トロフィーポジション」と呼ばれる姿勢です。
これはトスアップ後、打つ準備が整った状態で、ちょうどトロフィーを掲げるような形に似ています。
- トスした手が高く伸びている
- 打つ側の肘が肩の高さかやや上にあり、ラケットが後ろに倒れている
- 胸を張り、背中と体幹でバランスを取っている
この姿勢を正しく作ることで、胸と背中のしなりを最大限に生かし、肩と体幹の連動がスムーズになります。
肩の役割:ためを作って一気に解放
肩はサーブ動作の加速装置です。
ラケットを背中側に倒して「ため」を作り、打点に向けて一気に振り抜くことで爆発的なスピードが生まれます。
ただし、肩だけで振ろうとすると負担が大きくなるため、胸・背中・体幹の動きを組み合わせることが不可欠です。
胸と背中:しなりを生むエンジン
胸と背中は「弓のように伸び縮みするバネ」の役割を担います。
- トロフィーポジションで胸を張り、背中の筋肉を伸ばす
- 打点に向けて胸を回し、背中を一気に縮める
このしなりが肩と腕に伝わり、ラケットのスピードをさらに引き上げます。
体幹:力の通り道を安定させる
体幹はサーブにおける「軸」であり「力の通り道」です。
- 腹筋や脇腹の筋肉が回転をコントロール
- 背筋が姿勢を支え、スイング中も体のブレを防ぐ
- 体幹が安定することで、下半身からの力を無駄なく肩や腕へ伝達
体幹が弱いと、力が分散してスピードが伸びないだけでなく、フォームの安定性も失われます。
トレーニングの工夫(専門的アプローチ)
肩
- チューブを使ったひねり動作で安定性と爆発力を強化
- メディシンボールを頭上から投げる動作で体幹との連動を養う
胸
- ベンチプレスで押し出す力を強化
- ダンベルフライで胸の柔軟性としなりを高める
背筋
- 懸垂で広背筋を強化し、体幹から腕への力の伝達を改善
- ローイング系種目で背中の収縮力を高める
体幹
- ロシアンツイストで回旋力を養成
- プランクやサイドプランクで安定性を強化
- パロフプレスでサーブ時の体幹の軸を習得
実戦に直結するドリル
- メディシンボール投げ:サーブ動作を模倣し、胸・背中・体幹のしなりを強化
- 抵抗バンドを使ったシャドーサーブ:下半身から上半身への力の流れを習得
まとめ
硬式テニスでサーブ速度を上げるには、肩や腕の力だけでは不十分です。
- 肩で「ため」を作り、一気に解放
- 胸と背中でしなりを生み出す
- 体幹で軸を安定させ、力を効率よく伝える
この流れを完成させることで、サーブは力任せではなく、しなやかで爆発的な動作に変わります。
「力を入れる」よりも「力をつなげる」。これがサーブ速度を飛躍的に高める最大のポイントです。


