WiSP Journal / サッカー・身体づくり
サッカーで体幹を生かすには、お腹の筋肉だけでなく、下半身の力・姿勢・地面の押し方を合わせて考えることが大切です。
相手についていく一歩目、切り返し、キック、ジャンプ。こうした動きでは、身体を支えながら、場面に合う方向へ力を発揮することが求められます。
今回はスクワットを入り口に、サッカーの身体づくりを5つの視点から整理します。スクワットでつくる土台と、ピッチで力を使う練習の両方を考えていきましょう。
この記事のポイント
- 体幹は、脚や腕の動きを支える役割も担う
- 力の大きさに加えて、方向とタイミングを考える
- スクワットと、サッカーの動作練習を組み合わせる
スクワットから考える、5つの要素
ここで示す5つは、身体の働きを整理するための視点です。独立した能力の点数表や、怪我を予測する判定基準ではありません。
| 見るポイント | 考えたいこと |
|---|---|
| 01 体幹の支え | 脚を動かすとき、上半身や骨盤をどう支えるか |
| 02 下半身の力 | 股関節・膝・足首を使って、力を出し、受け止められるか |
| 03 動き出せる姿勢 | 次の動作へ移りやすい構えをつくれるか |
| 04 力の方向 | 進みたい方向・止まりたい方向に合わせて力を使えるか |
| 05 床反力 | 地面から受ける力を、姿勢や動きとどう組み合わせるか |
01|体幹は「固め続ける」より、動きに合わせて支える
体幹の役割は、腹筋に力を入れることだけではありません。胸や骨盤の位置を調整しながら、腕や脚の動きを支える働きもあります。
NSCAの専門資料では、体幹の安定性について、骨盤に対する体幹の位置を保ち、力を生み出す・制御する・伝える能力という考え方が紹介されています。[1]
腹直筋や腹斜筋、腹横筋、背中側の筋肉などが協力して姿勢を支えます。お腹の内側の圧力である「腹圧」も体幹を支える仕組みの一つですが、強く固めることだけを目標にはしません。
WiSPの指導で大切にする視点
スクワットでは、脚を動かしたときの胸や骨盤の位置も確認します。サッカーにつなげる際には、その場で姿勢を保つことに加えて、動きの中で支え方を変えられるかを考えます。
静止した姿勢の写真だけでは、力を発揮する速さや腹圧の大きさまでは確認できません。
02|下半身の力は、走る・跳ぶ動きの土台になる
スクワットは、股関節や膝を曲げ伸ばししながら負荷を扱う運動です。お尻や太ももなどの筋肉を使い、足首や体幹も姿勢の調整に関わります。
サッカーの身体づくりでは、立ち上がるときに力を出すことに加えて、しゃがむときに負荷を受け止めることも考えます。ただし、ゆっくりしゃがめることと、高速で走って急停止できることは同じではありません。
研究では、筋力と走力・跳躍力の「関連」が報告されている
成人のエリート男性サッカー選手を調べた研究では、ハーフスクワットの最大筋力と、スプリント成績・垂直跳びの高さに強い関連が報告されました。[2]
| 対象 | 成人エリート男性サッカー選手17人 |
|---|---|
| 平均年齢 | 25.8歳 |
| 調べたこと | ハーフスクワット最大筋力、スプリント成績、垂直跳びの関係 |
| 報告された結果 | 最大筋力と、スプリント成績・跳躍高に強い関連 |
| 解釈の限界 | 筋力を高めれば同じだけ速くなる、という因果関係を直接示した研究ではない |
出典:Wisløffら、2004年。公開抄録に基づく要約。小中高校生や女子選手に、そのまま当てはめられる結果ではありません。
03|パワーポジションは、次に動くための構え
ここでは「パワーポジション」を、股関節・膝・足首を使って、次の動作へ移りやすくした構えという意味で使います。
目標は、スクワットの姿勢をそのまま試合中に保つことではありません。守備で相手を見る場面と、前へ加速する場面では、必要な身体の傾きや足の位置が変わります。
NSCAのサッカー向け資料でも、方向を変える動きでは、身体の傾きや股関節・膝・足の位置を調整し、動きに合う角度で地面に力を加えることが説明されています。[3]
構えを考えるときのポイント
- 深くしゃがむこと自体を目的にしない
- 次に動く方向や、相手との距離も考える
- 姿勢の見た目だけでなく、そこから動き出せるかを見る
スクワットは、関節を使って身体を支える練習の一つです。その土台を、前後左右への一歩や守備の動きへつなげていきます。
04|大きな力を、必要な方向へ使う
サッカーでは、力の大きさだけでなく、力を使う方向も変わります。上へ跳ぶ、前へ加速する、勢いを抑えて止まる、といった動きは同じではありません。
| 動作 | 身体づくりと合わせて練習すること |
|---|---|
| 加速 | 前へ進むための身体の傾き、接地位置、脚の動き |
| 減速 | 進行方向の勢いを抑える接地と、次の動作に向けた姿勢調整 |
| 方向転換 | 今の進行方向を変え、次の方向へ動き出す足運び |
| キック | 軸脚で身体を支え、骨盤・体幹・蹴り脚の動きを合わせること |
| ジャンプ | 踏み切りの方向とタイミング、着地で身体を支えること |
上表は動作の特徴を整理したものです。スクワットだけで各能力が改善するという研究結果を示すものではありません。
スクワットで扱える重量が増えても、競技中に力を使う方向やタイミングが自動的に身につくわけではありません。筋力トレーニングと、走る・止まる・切り返す練習を組み合わせて考えます。
05|床反力は、地面が身体を押し返す力
床反力とは、足などが地面に力を加えたときに、地面から身体へ返ってくる力のことです。
「地面を押す力」と「地面が身体を押し返す力」は、作用する相手が異なります。床反力は後者を指します。
足と地面の間で起こること
足が地面に力を加える
↕
同時に働く、作用・反作用の関係
地面が身体を押し返す=床反力
床反力には上下方向だけでなく、前後・左右方向の成分もあります。身体の動きは、床反力の方向や大きさ、力が働く時間などに影響されます。
そのため、サッカーの練習では「とにかく真下へ強く踏む」という指示だけでは整理できません。どこへ進むのか、どこで止まるのかに合わせて、足の位置や身体の向きを考える必要があります。[3]
スクワットでつくる土台を、サッカーの動きへ
スクワットを含む筋力トレーニングと、実際の競技動作の練習は、役割を分けて組み合わせます。
NSCAの専門資料には、合図に反応して横方向へ加速する練習や、減速してからボールを扱う練習が紹介されています。筋力だけでなく、反応やボール操作を伴う練習も考えるための例です。[4]
-
01|力を出す・受け止める土台
スクワットなどで、その選手に合う範囲と負荷を扱う。 -
02|移動の中で力を使う
加速・減速・方向転換で、足運びや身体の向きを練習する。 -
03|相手やボールに合わせる
合図や状況を見て判断し、動きとボール操作を組み合わせる。
上記は練習の役割を示す整理例です。全員が同じ順番で進めるものではなく、内容を並行して取り組む場合もあります。
WiSPでは、今の身体とプレーの課題から考える
ここからはWiSPの指導方針です
WiSPで学生を指導する際には、まず身体の状態や動作を確認し、本人・保護者と目的や競技状況を共有してから、内容と負荷を考えています。
スクワットでも、深さや重さだけを見るのではなく、関節を動かせる範囲、姿勢の保ち方、動作中の痛み、トレーニング経験などを確認します。
「一歩目を速くしたい」「切り返しで遅れたくない」といった目標も伺いながら、筋力を高める練習と、動き方を身につける練習のどちらに取り組むかを検討します。
体幹だけ、重量だけで判断しない
目指すのは、その選手がプレーの中で力を使えるようになること。現在の動きや練習・試合の予定も踏まえ、取り組んだ後の様子を確認しながら調整します。
動作の確認は、トレーニングを考えるための情報収集です。怪我の予測や、病気・障害の診断を行うものではありません。
参考文献・専門資料
本文の[番号]に対応しています。以下の出典リンクは別タブで開きます。
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Taylor J, Reed M. Increase Hip and Trunk Stability with Loaded Carries for Injury Prevention, Rehabilitation, and Performance. NSCA Coach. 2020;7(3).
NSCA公式資料を読む
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Wisløff U, et al. Strong correlation of maximal squat strength with sprint performance and vertical jump height in elite soccer players. Br J Sports Med. 2004;38(3):285–288. DOI: 10.1136/bjsm.2002.002071.
PubMedで公開抄録を読む
-
NSCA. Rotational Movement Skills. Kinetic Select. 2023. 『Strength Training for Soccer』抜粋。
NSCA公式資料を読む
-
NSCA. Soccer-Specific Speed Drills. Kinetic Select. 2017. 『Developing Speed』抜粋。
NSCA公式資料を読む
FROM KNOWLEDGE TO ACTION
身体を知ることから、
次の一歩へ。
記事で得た知識も、身体の状態や目的によって活かし方は変わります。 WiSPでは、今の身体や動きを確認しながら、一人ひとりに合った方法を一緒に考えていきます。
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