WiSP Journal / 学生アスリートの身体づくり

「子どもに筋トレをさせても大丈夫?」「小学生から取り組む意味はある?」「バーベルは何kgから使っていい?」。スポーツをするお子さんを見守るなかで、こうした疑問を感じることはないでしょうか。

子どもでも、筋トレによる筋量の増加は期待できます。ただし、誰にでも同じ変化が起こるわけではなく、年齢だけで実施の可否や重量を決めることもできません。

この記事では、2026年に公表された研究で分かったことを整理したうえで、専門団体の目安と、WiSPが実際の指導で大切にしている考え方を紹介します。

子どもでも筋トレで筋肉は増える?

子ども・青少年をまとめてみると、筋トレによって筋肉の大きさや筋量に関わる指標が増える可能性が、今回の研究でも示されました。[1]

ここでいうレジスタンストレーニングとは、自分の体重や器具などの抵抗に対して筋肉を働かせる運動です。バーベルだけでなく、自重・マシン・ダンベル・チューブを使った運動も含みます。

2026年に発表された研究では何が分かった?

今回の論文は、複数の研究を一定の基準で集め、その結果を統合する「システマティックレビュー・メタ分析」です。新たに全員へ同じ筋トレを行わせた実験ではありません。[1]

研究概要
項目 内容
採用研究 23研究
参加者の合計 1,443人
対象年齢 8〜17歳
介入期間 8〜40週間

採用研究では週2〜3回の実施が多く、方法や負荷設定、測定方法は研究によって異なります。文献検索は2025年4月、論文の公開は2026年9月17日です。公開日までの全研究を網羅したという意味ではありません。[1]

掲載誌はSports Medicine、著者はYannik Kommらです。対象にはさまざまな子ども・青少年が含まれ、全員が競技に取り組む学生アスリートだったわけではありません。[1]

実際にどのくらい筋肉が増えた?

今回の統合結果から、共通して「何kg増えた」とは答えられません。測定方法が異なるため、研究では差の大きさを共通の尺度に換算した「効果量」を使っています。[1]

研究から分かったこと

筋肥大関連指標に、小さいながら統計学的に有意な差が認められました。

追加運動を行わない対照群との比較
比較した群 筋トレ群
vs
追加運動を行わない対照群
効果量
(Cohen’s d)
0.22
95%信頼区間 0.06〜0.37

出典:Kommら(2026)[1]。0.22は増加率や増加重量ではありません。

Cohen’s dは、両群の変化の差をデータのばらつきに照らして表したものです。95%信頼区間は推定の不確かさを示す範囲で、子どもの95%がこの範囲で変化したという意味ではありません。今回の区間は、差がないことを示す0をまたいでいません。[1]

別の運動を行う対照群との比較でも差は認められました。ただし研究ごとの結果が大きく異なるため、ひとつの数字として強く受け止めすぎないことが大切です。効果量は0.61、95%信頼区間は0.03〜1.20、研究間のばらつきの程度を表すI²は84.9%でした。[1]

この2つの比較は、同じ条件で「運動する子」と「運動しない子」の反応を直接比べたものではありません。「普段から運動する子ほど筋トレの効果が高い」とは言えません。

小学生・思春期前でも筋肉は増える?

思春期前については、今回の解析だけで明確な筋肥大効果を断定できません。ただし、「筋肉が増えない」と証明されたわけでもありません。

追加運動を行わない対照群との比較では、効果量0.16、95%信頼区間−0.04〜0.36でした。区間が0をまたいでおり、増加の可能性はあるものの、差をはっきり示すには不確かさが残ります。[1]

小学生という学年区分と、思春期前という成長段階は同じではありません。研究でも成熟度の把握方法がそろっていないため、学年だけで結果を当てはめることはできません。性別の解析にも限界があり、「女子には効果がない」と結論づけることもできません。[1]

筋肉の大きさの変化が明確でないことと、筋トレに意味がないことは別です。米国小児科学会(AAP)は、発達に合った内容と適切な指導のもとで、子どもも筋力づくりの恩恵を得られると説明しています。[3]

筋肉が大きくなったかだけで判断しない

WiSPでは、筋肉がどれだけ大きくなったかだけでトレーニングの成果を判断しません。本人の目的に合わせて、次のような点も確認します。

  • 必要な場面で力を発揮できるか
  • 動作中に姿勢を保てるか
  • 身体を意図したとおりにコントロールできるか
  • 関節を動かせる範囲と、その範囲を自分で扱えるか

見た目の変化だけを急ぐのではなく、今できる動きと、これから身につけたい動きを整理します。これらの確認項目の改善を、今回のKommらの論文が検証したという意味ではありません。

「週2〜3回やればいい」という意味ではない

研究でよく使われていた頻度を、そのまま全員の予定に当てはめるわけにはいきません。学生の身体には、筋トレ以外の活動による負担もかかるためです。

WiSPでは、競技練習・試合・体育や学校活動・その他の運動量を確認し、食事、睡眠・休養、成長段階、トレーニング経験も合わせて考えます。栄養や休養を考慮する姿勢は、NSCA・AAPの資料とも共通します。[2][3]

同じ「筋トレ」でも、自重・マシン・ダンベル・バーベル・チューブでは条件が異なります。さらに、種目・重量・回数・セット数・可動域によって刺激が変わります。可動域とは、関節や身体を動かす範囲のことです。

では、どのくらいの負荷をかければいい?

負荷を考える資料のひとつが、National Strength and Conditioning Association(NSCA:筋力トレーニングと体力づくりに関する専門団体)の若年者向けポジションステートメントです。以下は2009年のTable 2にある、筋力向上を目的とした進行の一般的な目安です。[2]

経験に応じた一般的な目安(筋力向上)
経験 強度
(%1RM)
回数 セット数
初心者 50〜70% 10〜15回 1〜2セット
中級者 60〜80% 8〜12回 2〜3セット
上級者 70〜85% 6〜10回 3セット以上

1RMとは、「1回だけ持ち上げられる最大重量」を基準にした考え方です。ここでの初心者・中級者・上級者は、学年ではなくトレーニング経験による区分です。表は筋肥大の最適条件や、安全性の境界を示すものではありません。[2]

NSCAは、軽い負荷から技術を学び、個人差に合わせて段階的に進めることと、適切な指導・監督を重視しています。[2]

バックスクワットやベンチプレスは何kgから?

「小学生は○kg、中学生は○kg」と一律には決められません。同じ重量でも、どの範囲をどのように動かせるか、経験や成長段階によって、適切な負荷は異なります。

WiSPでは、成長段階やトレーニング経験、身体の状態を考慮したうえで、肩の後ろにバーを担ぐバーベル・バックスクワットや、仰向けでバーを押し上げるベンチプレスを行う場合もあります。

バックスクワットでは、重量に加えて次の点を確認します。

  • どこまでしゃがめるか
  • その可動域を自分でコントロールできるか
  • 動作中に姿勢を維持できるか
  • その範囲で身体と負荷を支える筋力があるか
  • 動作中に痛みがないか
  • その種目の経験がどの程度あるか

ベンチプレスでも、ただバーを持ち上げられるかではなく、設定した可動域で姿勢とフォームを保ちながら扱えるかを確認します。バーベルという器具の名前だけで、危険性や効果を決めることはしません。


WiSPでは、まず身体の状態を確認する

実際にWiSPへトレーニングに来ている学生についても、まず現在の身体の特徴を確認してから内容を検討しています。目的は、安全に配慮し、本人の目標に合った種目や負荷を考えるための情報を集めることです。

  • オーバーヘッドスクワット(両腕を頭上に上げてしゃがむ動き)などによる全身動作
  • 片脚で立つ際の姿勢やバランス
  • 本人の動作による各部位の柔軟性と、関節を動かせる範囲
  • パスート(動く対象を目で滑らかに追う動き)など、眼球運動・視機能に関わる様子
  • 前庭系(頭の動きや傾きを感じ取る仕組み)も関わる、バランスや反応の様子
  • 必要に応じた、トレーナーによる身体の状態や可動域の確認

痛みやめまいなどの症状がある場合には、動作チェックだけで原因を決めつけず、必要に応じて医療機関への相談を案内します。

評価してからトレーニング内容を決める理由

WiSPが現状確認を先に行うのは、今の身体に合う課題と進め方を整理するためです。同じ競技・同じ学年でも、最初に取り組む内容が同じになるとは限りません。

  1. 01
    評価現在の動作や身体の特徴を確認
  2. 02
    課題整理優先して取り組む点を整理
  3. 03
    目標共有本人・保護者と目的や競技状況を共有
  4. 04
    メニュー・負荷設定種目・重量・回数・可動域などを設定
  5. 05
    実践動きと本人の反応を確認しながら実施
  6. 06
    再評価経過を確認し、内容と負荷を再調整

最初の評価で決めた内容を続けるだけでなく、実際の動き、疲労感、痛みの有無、競技日程などを確認しながら調整します。評価は「合格・不合格」を決めるためではなく、その時点の進め方を考える材料です。

まとめ

子ども・青少年でも、レジスタンストレーニングによる筋量増加は期待できます。ただし、その程度には不確かさと個人差があり、筋肉の大きさだけが学生のトレーニングの成果ではありません。

大切なのは、「今の身体に対して、何を、どのくらい、どのように行うか」です。年齢や研究の数字だけで判断せず、成長段階・経験・身体機能・競技活動・食事・休養を合わせて考えます。

進め方に迷う場合には、学校やチームの指導者、子どもの運動指導に詳しい専門家へ、現在の身体の状態や負荷設定について相談することも選択肢です。

出典・参考文献

本文中の[数字]は出典番号です。以下の原文・公式資料のリンクは別タブで開きます。

  1. Komm Y, Zeiler L, Held S, et al. Effects of Resistance Training on Muscle Hypertrophy in Children and Adolescents: A Systematic Review and Meta-Analysis. Sports Medicine. 2026年9月17日公開. 原文・公式資料
  2. Faigenbaum AD, Kraemer WJ, Blimkie CJR, et al. Youth Resistance Training: Updated Position Statement Paper From the National Strength and Conditioning Association. J Strength Cond Res. 2009;23(Suppl 5):S60–S79. 特にTable 2(S72). 原文・公式資料
  3. American Academy of Pediatrics. American Academy of Pediatrics Provides Guidance on Resistance Training for Children. HealthyChildren.org. 2020年5月26日. 原文・公式資料

文献確認日:2026年9月28日。文献[1]はCC BY 4.0で公開されています。本記事の研究解説は原著を日本語で要約・再構成したもので、原著の逐語訳ではありません。ライセンス

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