WiSP Journal / 評価とトレーニング

パフォーマンス向上を目指すとき、WiSPでは「何の練習をするか」を決める前に、今の身体と動きを確認します。

足を速くしたい。球速を上げたい。切り返しで相手に遅れたくない。同じ目標でも、取り組むべき内容は選手によって違います。

動画で見たドリルを試すことも、練習のきっかけになります。ドリルとは、特定の動きを身につけるための練習です。その練習を自分に生かすには、目的と現在の課題を結びつけることが大切だと考えています。

WiSPが大切にする進め方

評価 → 仮説 → 実践 → 変化の確認 → 再評価
身体の状態と目標に合わせて練習を選び、取り組んだ後の様子から内容を調整します。

なぜ、最初に評価するのか?

評価の目的は、選手に点数をつけることではなく、どこから取り組むかを考えるための情報を集めることです。

例えば「走るときに力強さが足りない」と感じても、筋力の問題なのか、短い時間で力を出すことが難しいのか、動作のタイミングなのかは、見た目の印象だけでは決められません。

WiSPでは、本人が感じていること、動作、関節を動かせる範囲、トレーニング経験、練習や試合の状況などを合わせて考えます。

同じ目標でも、確認することは違う

「足を速くしたい」「球速を上げたい」という目標から、すぐに一つのメニューへ決めるのではなく、いくつかの可能性を整理します。

目標と、確認したいことの例
目標 確認する視点
足を速くしたい スタート・加速・最高速度のどこが課題か。筋力、短い時間で力を出す能力、接地や脚の動きはどうか。
球速を上げたい 下半身・骨盤・体幹・腕の動きのつながり、必要な可動域、筋力、投球量や疲労はどうか。
切り返しを良くしたい 減速、足の位置、身体の向き、再加速、相手や合図への反応のどこが難しいか。

上表は評価を考えるための例です。各選手の原因を示すものではなく、すべての項目を毎回測定するという意味でもありません。

例えば、動画で接地の位置を確認することと、地面に加えている力を測ることは別です。確認できたことと、まだ分からないことを分けて考えます。

パフォーマンス向上を目指す、5段階の評価サイクル

WiSPでは、次のような流れでトレーニングを考えています。これは指導の進め方を整理したもので、このサイクル自体が成果を保証するものではありません。

  1. 現状を評価する
    身体の状態、動作、本人の感覚、競技の目標を確認します。必要に応じて動画や測定値も使います。
  2. 課題の仮説を立てる
    「この動きにくさが関係しているかもしれない」など、取り組む候補を整理します。仮説は、現時点での見立てです。
  3. 練習内容を選び、実践する
    ドリル、筋力トレーニング、動かせる範囲を広げる運動、技術練習などから、目的に合う内容を選びます。
  4. 直後と、一定期間後の変化を確認する
    その場での動きや感覚に加えて、後日も再現できるか、目標とする動作に変化があるかを見ます。
  5. 継続・調整して、再評価する
    結果と負担の様子を踏まえ、種目・負荷・回数・説明方法などを調整し、もう一度確認します。
再評価で得た情報を、次の練習へ

一度メニューを決めて終わりではなく、取り組みながら見立ても更新していきます。

その場で変わったことと、身についたことを分ける

直後に動きやすくなったことは参考になりますが、それだけで長期的な上達を判断することはできません。

学習とパフォーマンスを整理したレビューでは、練習中の成績と、時間がたっても残る学習を区別する重要性が示されています。その場で成果が見えなくても学習が進む場合があり、反対に、練習中の好成績が長期的な習得を意味するとは限りません。[1]

変化は、確認する時期を分けて見る
確認の時期 見たいこと
実施直後 動きやすさ、説明の伝わり方、動作の変化、痛みや負担の有無。
後日の練習 同じ動きを再現できるか。細かい声かけがなくても取り組めるか。
一定期間後 目標に合わせた測定値や競技動作に変化があるか。疲労や継続しやすさはどうか。

上表は、学習と一時的な成績を区別する考え方を、現場での確認方法に整理したものです。参考文献[1]がこの表やWiSPの指導効果を直接検証したわけではありません。

動画・数値・本人の感覚を組み合わせる

動画は動き方、タイムや重量などの数値は記録、本人の感覚は動きやすさや負担を知る手がかりになります。それぞれが異なる情報を持っています。

NSCAの専門資料でも、トレーニングの量や強度だけでなく、個人の反応を確認して次の計画へつなげること、目的に合い、安定して測れる指標を選ぶことが重視されています。[2]

比較するときに、そろえたい条件

  • 動画を撮る位置・角度と、確認する動作
  • 測定器具、スタート方法、試行回数
  • ウォームアップや休憩の取り方
  • 練習前後のタイミングと、疲労の状態

条件が違う記録は、数値が良くなっていても単純には比較できません。小さな差が測定のばらつきによる可能性も考え、条件と経過を一緒に記録します。

変化に応じて、継続か調整かを考える

判断するのは、「良くなったか」だけではありません。負担が大きすぎないか、同じ変化が繰り返し確認できるかも見ます。

練習を見直すときの考え方
確認できたこと 次に考えること
狙った変化があり、負担も適切 継続しながら、後日も再現できるかを確認する。必要に応じて段階的に調整する。
変化がまだはっきりしない 測定条件、練習量、説明の理解、疲労を確認する。継続して見るか、方法を変えるかを検討する。
痛みや強い負担がある そのまま押し進めず、負荷や内容を見直す。症状に応じて医療機関への相談も検討する。

反復練習は、動きを身につけるうえで大切です。そのうえで、目的に合った練習になっているか、今の身体に合う難しさかを確認しながら続けます。

WiSPでは、評価の結果を一緒に共有します

当ジムでは、動きを確認するだけでなく、「なぜこの練習に取り組むのか」が本人にも伝わるように説明し、必要に応じて保護者とも目標を共有します。

実践後には、やりやすかったことや難しかったことを伺い、身体の状態や競技活動も踏まえて内容を調整します。

今の状態を知り、目的を持って取り組み、変化を確かめる。この積み重ねを、パフォーマンス向上に向けた身体づくりで大切にしています。

参考文献・専門資料

本文の番号に対応しています。以下のリンクは別タブで開きます。

  1. Soderstrom NC, Bjork RA. Learning Versus Performance: An Integrative Review. Perspectives on Psychological Science. 2015;10(2):176–199. DOI: 10.1177/1745691615569000.


    著者所属研究室の公開論文を読む(PDF)
  2. NSCA. Developing Load Monitoring Systems and Strategies. Kinetic Select. 2023. 『NSCA’s Essentials of Sport Science』抜粋。


    NSCA公式資料を読む

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記事で得た知識も、身体の状態や目的によって活かし方は変わります。 WiSPでは、今の身体や動きを確認しながら、一人ひとりに合った方法を一緒に考えていきます。

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