軟式テニスは、軽量なボールの特性からラリーが長時間続くことが多く、選手にとって持久的なプレーが求められる競技です。
華やかでスピーディーな展開の裏側では、下肢・腰・体幹に疲労が蓄積し、怪我のリスクが高まっています。
本稿では、専門的な視点を踏まえつつ、一般プレーヤーにも理解できる形でその仕組みと予防策を解説します。
長時間ラリーがもたらす身体的負担
下肢への影響
軟式テニスは細かいステップワークと素早い方向転換の連続です。
膝や足首は常に急停止や切り返しの衝撃を受け、大腿四頭筋や下腿三頭筋といった主要筋群は消耗します。
その結果、膝関節障害(ジャンパー膝、半月板損傷)や足首の捻挫リスクが増大します。
腰への影響
ラリー中に繰り返される「前傾姿勢」と「体幹の回旋動作」は、腰椎に慢性的なストレスを与えます。
特に後衛はストロークの度に腰をひねり続けるため、腰痛や腰椎分離症などの障害に直結することがあります。
体幹への影響
軟式テニスでは、体幹が安定して初めて正確なショットが可能となります。
しかし長時間のプレーで腹筋群や脊柱起立筋が疲労すると姿勢保持が困難になり、フォームが崩れ、怪我の連鎖を引き起こしやすくなります。
疲労と怪我リスクの関連
筋疲労によるパフォーマンス低下
筋肉が疲弊すると反応速度が落ち、ステップの遅れやフォームの乱れを生じます。これにより「本来受け止めるはずの負荷」が一部位に集中し、障害を誘発します。
無意識の代償動作
一部の筋群が疲れると、他の部位で無意識に補おうとします。
下肢が疲れれば腰で振り、腰が限界なら肩や腕に頼る。
こうした代償は運動連鎖を崩し、オーバーユース(使いすぎ障害)につながります。
体力・筋力の基盤づくり
下肢の強化
- 大腿四頭筋・ハムストリングス:切り返しとストップ動作の安定性を担う。スクワット、ブルガリアンスクワットが有効。
- 下腿三頭筋・前脛骨筋:踏み込みと蹴り出しを支える。カーフレイズやジャンプドリルで強化。
- 股関節周囲筋群(中殿筋・大殿筋):膝の横ブレを抑える。サイドランジやヒップリフトが推奨。
体幹の強化
- 腹直筋・腹斜筋・腹横筋:体幹回旋と姿勢保持の要。プランクやツイスト系エクササイズが有効。
- 脊柱起立筋群・多裂筋:前傾姿勢を安定させ、腰部障害を予防。デッドリフトやバックエクステンションが効果的。
全身連動性の強化
テニスは「下肢 → 体幹 → 上肢」の運動連鎖でショットが成立します。メディシンボールスローやジャンプトレーニングは、競技動作を模倣しつつ全身をつなげる力を養います。
持久力とリカバリー
試合は短時間の全力と休息を繰り返すため、インターバルトレーニングが有効です。また、柔軟性を高めるストレッチは動作効率を上げ、疲労の蓄積を防ぎます。
一般プレーヤーが意識すべきこと
怪我は「疲労が蓄積しているとき」に最も起こりやすいものです。
長時間のラリーが続いたら、休憩を取り、アイシングやストレッチでリセットすることが大切です。
特に学生や社会人は練習時間が限られるため「量より質」を意識した方が、長期的に安全で効果的です。
まとめ
軟式テニスの長時間ラリーは、下肢・腰・体幹への疲労を蓄積させ、怪我のリスクを高めます。
しかし、基盤となる筋力・体幹力を整え、全身連動性を高めることで、そのリスクは大きく減らすことが可能です。
軟式テニスを長く楽しむためには、「限界まで頑張る」よりも「賢く身体をつくり、守る」ことが重要です。
技術と同じように、身体づくりもまた競技力の一部なのです。