ラグビーでは、走る・跳ぶ・ぶつかる・方向を変えるなど、全身を使った多様な動きが求められます。
その中でも「可動域(関節の動く範囲)」は、パフォーマンスを左右する重要な要素の一つです。
特に足首・膝・腰の3つの関節は、プレー中のすべての動きの基盤になります。
この記事では、それぞれの可動域不足がどのように動きへ影響するのか、そして改善のための考え方を解説します。
1. 足首の可動域不足がもたらす影響
足首(特に「背屈」と呼ばれる、つま先を上げる動き)の可動域が狭いと、姿勢や動きに大きな制限がかかります。
加速動作への影響
ダッシュの初動では、地面を強く押し出すために足首がしっかりと曲がることが必要です。
可動域が狭いと、つま先が十分に上がらず、前傾姿勢を保ちにくくなります。結果として、
- 地面を押す力が弱くなる
- スタート時に体が起き上がってしまう
- 加速の初動が遅れる
といった問題が起こります。
ジャンプ・着地への影響
ジャンプの際は、足首がクッションの役割を果たします。
可動域が不足していると衝撃を吸収しにくくなり、膝や腰への負担が増大。
繰り返すうちに、シンスプリント(すねの痛み)や膝の炎症などにつながることもあります。
2. 膝の可動域不足がもたらす影響
膝は「曲げ伸ばし」の中心であり、地面からの力を上半身に伝える中継点でもあります。
膝の動きが硬いと、力の伝達効率が落ち、スピードや安定性に悪影響が出ます。
加速・減速への影響
膝がスムーズに曲がらないと、ストライド(歩幅)が小さくなり、スピードが出にくくなります。
逆に、急停止や方向転換の際には、衝撃を吸収できず膝に大きな負担がかかります。
このような状態では、ACL(前十字靭帯)損傷などのケガのリスクも高まります。
ジャンプ動作への影響
膝の屈伸が十分でないと、ジャンプの「ため」をつくりにくく、跳躍力が下がります。
また、着地時の衝撃を吸収しにくくなり、体全体のバランスも崩れやすくなります。
3. 腰の可動域不足がもたらす影響
腰(股関節と腰椎を含む)は、全身の連動の要です。
ラグビーでは、前傾姿勢・タックル・ステップなど、あらゆる動作で腰の柔軟性が求められます。
方向転換・ステップへの影響
腰や股関節が硬いと、上半身と下半身の動きがバラバラになります。
結果として、スムーズな方向転換ができず、ステップ時に体が流れてしまうことがあります。
これにより、反応の遅れや、相手への対応力の低下が起こります。
姿勢の崩れとケガのリスク
腰の動きが制限されると、他の部位(特に背中や太もも)で代償動作が起こります。
その状態が続くと、腰痛・ハムストリングスの肉離れ・股関節痛といった慢性的な障害につながります。
4. 可動域を広げるためのポイント
可動域を広げるには、単なるストレッチだけでは不十分です。
大切なのは、「動かす+支える」をセットで考えることです。
① 動的ストレッチで動きを引き出す
ラグビーのように動きながらプレーする競技では、静的ストレッチよりも、**動的ストレッチ(アクティブな可動域運動)**が効果的です。
例:
- 足首 → アンクルサークル、カーフレイズ
- 膝 → スクワット、ランジ
- 腰 → ヒップオープナー、レッグスウィング
② 体幹と連動した動作づくり
可動域を広げても、体幹が安定していないと動作がバラつきます。
体幹トレーニングやバランス系トレーニングを組み合わせることで、可動域を「使える動き」に変えていくことが大切です。
5. まとめ
足首・膝・腰の可動域不足は、
- 加速の出だしが遅れる
- ジャンプの高さ・安定性が落ちる
- 方向転換がぎこちなくなる
といった形で、プレーの質に直結します。
学生ラグビーの段階で、可動域を意識した体づくりをしておくことは、ケガの予防と競技力向上の両面に効果的です。
日々の練習前後に少しずつ取り入れるだけでも、体の動きは確実に変わります。
「強い体」だけでなく、「しなやかに動ける体」を目指していきましょう。

