成長期のテニス選手は、筋力やパワーが発達途中である一方、骨や関節はまだ完全に成熟していません。

そのため、過度な筋肥大トレーニングは怪我のリスクを高める可能性があります。

この年代では「神経系トレーニング」によって運動の効率やスピード、瞬発力を高めることが、テニスのパフォーマンス向上に直結します。

本記事では、成長期選手が神経系トレーニングを優先すべき理由と、具体的なトレーニング方法を実践的に解説します。

1. 成長期に筋肥大より神経系トレーニングを優先する理由

成長期の骨や関節、腱はまだ発達途中であり、筋肥大を目的とした高負荷トレーニングは骨端線や関節に過度な負荷をかけ、怪我の原因になりやすいです。

一方、神経系トレーニングは筋肉の大きさではなく、動作の効率やスピード、協調性を高めることに主眼を置きます。

神経系トレーニングを行うと、以下の能力が向上します。

  • 素早いステップワーク
  • ボールに合わせた瞬発的なラケット操作
  • 身体全体の協調動作(下半身から腕への力伝達)

この時期の選手は神経系の可塑性が高く、スピード・敏捷性・協調性の改善が非常に効率的です。

2. 神経系トレーニングの基本原則

神経系トレーニングは、低〜中負荷で反復回数を少なく、スピード重視で行うことが特徴です。

  • 速度を意識:筋肉を早く収縮させ、フォームを崩さずに動作する。
  • 負荷は自体重〜軽負荷:過剰な重りは不要。自体重や軽いダンベル、ゴムチューブで十分。
  • 反復は少なめ、セット間は長め:1セットあたり5〜10回程度で神経系の疲労を考慮。

3. 具体的な神経系トレーニング例

(1)ラテラルスプリットステップ

目的:ステップワークの瞬発力向上

方法:足を肩幅よりやや広めに開き、膝を軽く曲げる。両足を軽く跳ねるように左右交互に動かす。1回1秒程度のリズムで素早く跳ねる。

ポイント:膝や股関節を柔軟に使い、着地時の衝撃を吸収。軽く前後に重心を揺らすことで、コート上の動きに対応。

(2)メディシンボールスロー(下半身主導)

目的:下半身から腕への力伝達、回旋動作の協調性向上

方法:軽量メディシンボール(1〜3kg)を持ち、膝を軽く曲げ股関節から体幹を回転させ、横方向にボールを投げる。元の位置に戻り、反対方向も同様に行う。

ポイント:腰や肩に負担をかけず、下半身から上半身への力の連動を意識。フォア・バックの回旋動作に直結。

(3)反応ドリル(ライトボールキャッチ)

目的:神経系の反応速度と手・目・足の協調性向上

方法:コーチが左右や前後にボールを投げ、選手は素早く反応してキャッチする。

ポイント:ボールの位置に応じて身体を素早く動かすことで、ラリー対応力が向上。神経系を刺激しつつ安全に全身運動が可能。

4. 神経系トレーニングを取り入れるコツ

  • 週2〜3回を目安に、試合やテクニック練習の前に実施
  • 高負荷トレーニングは成長後に段階的に導入
  • トレーニング中はフォーム重視・スピード重視で行う

まとめ

成長期のテニス選手は、筋肥大を狙った高負荷トレーニングより、神経系トレーニングを優先することがパフォーマンス向上と怪我予防の両立につながります。

ラテラルスプリットステップで瞬発力を高め、メディシンボールスローで下半身から腕への力の連動を養い、反応ドリルで神経系の反応速度と協調性を向上させることで、実戦での動きがより滑らかで素早くなります。

成長期のうちに神経系を最大限に活かすことが、筋肉が成熟した後のパワー発揮にもつながります。安全かつ効率的に、神経系トレーニングを日々の練習に取り入れていきましょう。