「コーチにフォームを直せと言われるが、どうしても直らない」
「スピンをかけたいのに、ボールがまっすぐ飛んでしまう」
学生テニスの現場では、このように“指導と実際のプレー”にズレを感じる場面が多くあります。
このズレは選手の努力不足や理解不足だけではなく、指導者の伝え方や選手の身体的特徴など、様々な要因が絡み合って起こるものです。
ここでは、テニスにおける指導と動作のズレがなぜ起こるのか、そしてその解決のヒントを探っていきます。
指導がプレーにうまく反映されない主な原因
1. 言葉と動作のイメージが一致していない
- 「もっと前で捉えて」「スイングを流さずに」などの抽象的な指示は、選手によってイメージが異なります。
- 言葉の意図を、具体的な動きや感覚に落とし込めていないことも。
2. 身体能力や操作性の未熟さ
- スイングやフットワークの技術は理解していても、筋力や柔軟性の不足により再現できないことがあります。
- 特にテニスでは、体幹・下半身・手腕の連動が必要なため、動作の精度を高めるには総合的な身体操作が欠かせません。
3. 指導内容が選手のレベルに合っていない
- 初心者にいきなりスピンやスライスを教えようとしても、基本フォームが固まっていないと習得は難しいものです。
- 指導者が選手の現状の習熟度を正しく評価できていないこともズレの原因になります。
その他に考えられるズレの要因
4. 選手と指導者の学習スタイルの違い
- 言葉で説明されるより、動画や実演で理解したほうがうまくいく選手もいます。
- 指導者が選手の理解タイプを把握し、それに合わせて指導方法を変えることが求められます。
5. 指導者の成功体験の押し付け
- 指導者が自身のプレースタイルに基づいて、“この打ち方が正しい”と決めつけて教えるケースがあります。
- 身体の使い方や骨格の違いによって、同じフォームが合わない場合もあるため、柔軟な対応が必要です。
6. 心理的要因によるプレーの硬直
- 指導内容を意識しすぎるあまり、自然な動きが失われ、“考えすぎてプレーが遅れる”ことも。
- 特に公式戦や練習試合でこの傾向が見られる選手は、プレー速度や選択肢に制限がかかりやすいです。
指導者が意識すべきポイント
テニス指導においては、「正しいフォーム」を教えるだけでなく、“その選手にとってベストな動き”を模索する姿勢が大切です。
- キュー(単語)を使って感覚を引き出すなど、言葉の「伝え方」に工夫を加える。
- 選手のフィードバックを積極的に取り入れ、理解しやすい要素と難しい要素を共有する。
- 指導者自身も「これが正解」ということに縛られず、常に新しい理論や指導法を取り入れる。
おわりに
学生テニスにおける技術習得やフォーム改善は、単に“教える・教わる”という関係だけで成り立つものではありません。
プレイヤー自身が、自分の身体の特性、動きの癖、理解状態を客観的に捉えること。
指導者が、その情報を踏まえた上で、伝え方やアドバイスを選ぶこと。
この相互作用がうまく機能することで、技術習得のスピードは格段に高まり、選手の成長につながっていきます。
テニスは“感覚”と“科学”の融合です。指導もまた、選手とともに進化し続けることが大切です。

