テニスは一見すると短いラリーの積み重ねに見えますが、実際には爆発的なダッシュ、素早い方向転換、ストップ動作、そしてラリーの合間の回復が絶えず求められる、とても運動量の多い競技です。
練習や部活動の時間が限られる学生にとって、これらの力を効率的に伸ばすトレーニングとして注目されているのがシャトルランです。
ここでは、テニスという競技の特性に合わせながら、なぜシャトルランが特に学生選手に有効なのかを、指導者にも選手にもわかりやすく解説します。
テニスは“短時間の高強度×無数の反復”という特殊な競技
テニスの1ポイントは短いものでは数秒、長ければ長時間のラリーになります。
しかし共通しているのは、
- 予測不能なボールへの反応
- 細かいフットワーク
- 瞬発的なダッシュ
- 直後の回復
の連続だという点です。
つまりテニスには、反復スプリント能力(Repeated Sprint Ability)と高強度からの心拍回復能力が強く求められます。
シャトルランは、まさにこの“短い距離を往復しながら負荷が増していく”という特性が、テニスの動き方と非常にフィットします。
シャトルランがテニス選手に効果的な理由
1. 左右・前後の切り返し能力が鍛えられる
テニスではコート上での急停止・加速・方向転換が1ポイントごとに何度も発生します。
シャトルランも折り返し地点で必ず方向転換が入るため、この“切り返し”の筋力と神経系を効率よく鍛えられます。
これは特に、
- 最初の一歩の反応
- コートカバーのスピード
- スプリットステップからの動き出し
に大きく影響します。
2. 高強度ラリー後の回復能力が向上する
試合中は、激しいラリーがあっても10秒〜20秒の短い休憩で次のポイントへ向かわなければなりません。
このとき重要になるのが、急上昇した心拍をすぐに下げる“回復力”です。
シャトルランはレベルが上がるにつれ負荷が上がり、「高強度 → 回復 → 高強度」の繰り返しが自然に起こるため、ラリー後の“息の戻り”が速くなり、試合後半でも動きが鈍りにくくなります。
3. スピード持久力が高まり、最後まで走り負けない
学生テニスでは、技術の差以上に「動けるかどうか」でゲームが大きく変わります。
特に後半のタイブレークや長引くラリーでは、スピードを保ったまま動ける持久力が勝敗を左右します。
シャトルランは短い距離を繰り返し走るため、純粋な持久走では身につきにくい“スピードを保つ力”が効果的に鍛えられます。
4. 測定が容易で成長が明確に見える
どのレベルまで到達したかが記録として残るため、
- 部内での体力基準
- ケガからの復帰時の参考
- 自分の伸びの確認
など、成長の見える化にも最適です。
数字として成長がわかることで、学生選手でも自主的に継続しやすくなります。
選手が主体的に取り組むための“目的意識”
シャトルランは確かにきついトレーニングですが、「なぜ自分がこれをやるべきか」が理解できると取り組み方が大きく変わります。
テニスでは、動きの質が落ちた瞬間にミスが増え、相手に主導権を握られます。
- 最後の一本に追いつけない
- ボールへの反応が遅れる
- 重要な場面でフットワークが乱れる
といった現象は、体力的な要素が大きく関係しています。
シャトルランの目的を理解すれば、「試合で粘り強く戦い続けるための体づくり」という意識が持て、練習の質も変わります。
注意:オーバートレーニングには気をつける
シャトルランは負荷が高く、頻度を誤ると疲労が蓄積し、パフォーマンス低下やケガにつながる可能性があります。
- 週2〜3回以上の高強度実施は避ける
- 技術練習量が多い日は無理に入れない
- 体が重い・膝や足首が痛い日は休む
- 試合前日は行わない
このように疲労管理を徹底することで、効果を最大限引き出せます。
まとめ
シャトルランはテニスに必要な反応スピード・方向転換能力・反復スプリント力・心肺回復力を総合的に鍛えられる、非常に効率の良いトレーニングです。
学生テニスにおいて、
「最後の一本に追いつけるか」
「長いラリーでも動ききれるか」
が勝敗を大きく左右する以上、シャトルランは体力づくりの強い味方になります。
適切な頻度と強度管理を行いながら日々の練習にうまく取り入れてみてください。


