ウィスポに来てくれる学生たちは、ただ運動をしに来るだけではありません。

自分の体の使い方を理解し、野球のパフォーマンスを高め、将来の大きな目標へ少しずつ近づくために、目的を持ってトレーニングに取り組んでいます。

今回は、野球を頑張る兄弟のトレーニングを例に、普段どのような指導を行っているのか、そして私が日々感じていることをお伝えします。

提示するメニューは“課題克服のための優先順位”

毎回のトレーニングでは、その日に重点を置きたい動きや課題をもとにメニューを組み立てています。

そして、自宅での宅トレメニューは、ジムで取り組んだ内容の中から“今の課題に最優先で必要な動き”を抜き出したものです。

兄弟はいつも真面目に、そして丁寧にメニューへ取り組んでくれます。

努力を習慣として継続できるのは、成長期の選手にとって大きな強みです。

理解して動くからこそ、トレーニングは効果を発揮する

ただし、どれだけ真剣に取り組んでいても、

「自分の体がどう動いているのか」
「なぜこのトレーニングをするのか」

という部分が理解できていなければ、効果は半減してしまいます。

トレーニングは“作業”ではなく、自分を知り、改善点を見つけ、目的に合わせて体を整えるプロセスです。

だからこそ私は、選手からの質問や疑問をとても大切にしています。

質問や気づきは成長のスイッチ

とはいえ、簡単に質問が出てくるとは限りません。

兄弟も含め、多くの選手が、

・「はい」「いいえ」で答えられない質問になると急に無言になる
・問いかけを変えても返答が曖昧になる
・何を感じているのかが言葉にならない

といった場面は少なくありません。

選手自身も、感覚を言語化することには慣れていません。

だから、トレーニングメニューの選定以上に“コミュニケーションに苦戦すること”も実際には多くあります。

しかし、このコミュニケーションこそが成長の鍵です。

選手が抱えている感覚や疑問を一緒に探りながら、一つずつ整理していくことで、自分の体に対する理解が確実に深まります。

動画共有は“言葉以上の情報”をくれる

自宅での動きを見られないからこそ、私は動画の共有を勧めています。

兄弟にも「気になる動作は動画を撮って送ってほしい」と伝えています。

動画があると、

・肩が開く瞬間
・軸の傾くタイミング
・力の伝わり方
・フォームの癖

こうした細かい部分が一目で分かります。

言葉で説明しにくい動きも、動画があれば精度高くアドバイスができるため、成長スピードは大きく変わります。

プロを目指すなら“選手とトレーナーの連携”が不可欠

兄弟の夢はプロ野球選手になること。

その夢は、本人の努力はもちろん、正しい方向に努力を積み重ねることが求められます。

そのためには、

自分の課題を理解すること
目的を持って練習すること
成長を客観的に確認すること

必要なトレーニングを選択できるようになることが欠かせません。

私が一方的にメニューを出すだけでは、この力は育ちません。

質問、動画共有、気づきの共有など、選手とトレーナーが互いに連携しながら進むことで、成長の角度が格段に高まります。

“人と人”として向き合うからこそ、伝わる指導になる

トレーニング内容そのものも大切ですが、選手が安心して話し、疑問を伝えられる空気づくりは同じくらい重要です。

こちらからの問いかけ方やタイミング、説明の仕方、距離感を少し変えるだけで選手の反応は大きく変わります。

コミュニケーションの形は選手によって違うため、その子に合う方法を探しながら、毎回のトレーニングを進めています。

結局のところ、トレーニングは「人と人のやりとり」で成り立っていると感じています。

最後に|成長は“対話”から生まれる

ウィスポは、ただ体を鍛える場所ではありません。

選手が自分の体を理解し、目的を持って成長できるように、選手と一緒に考え、整理し、前に進む場所です。

兄弟のトレーニングを通して感じるのは、「対話が生まれたとき、成長は一気に加速する」ということ。

これからも、選手が夢に向かう道のりを、寄り添いながら全力でサポートしていきたいと思います。