「もっと速く走りたい」「キック力を上げたい」「フィジカルで負けたくない」

スポーツに真剣に取り組む学生にとって、こうした願いは日々の練習の原動力になります。

そのために「筋トレが大事」とよく言われますが、誤解してはいけないのは、筋トレがベンチプレスやスクワットのような単調な動きだけを指しているわけではないということです。

本当に競技力を高めるには、筋力だけでなく、バランス能力、瞬発力、敏捷性、持久力、そして神経系の反応など、幅広い能力をバランスよく鍛える必要があります。

筋力だけではパフォーマンスは完成しない

筋力は競技力の土台です。しかし、筋力があるだけで勝てるわけではありません。

例えば、筋力があってもバランス感覚が悪ければ、接触プレーで踏ん張れずに転びやすくなります。スピードがあっても方向転換が遅ければ相手に置いていかれます。俊敏性や持久力が不足していると、良いプレーを試合の中で継続することができません。

競技力というのは、筋力、スピード、持久力、柔軟性、判断力など、さまざまな要素の掛け算で決まります。一つだけを高めても、全体としての能力は思ったほど上がりません。

幅広いトレーニングで総合的に鍛える

競技パフォーマンスを高めるためには、筋トレに加えて次のような多面的なトレーニングを組み合わせる必要があります。

・バランストレーニング

 片足スクワットや不安定な床の上での体幹トレーニングなど、身体をコントロールする力を高めます。

・敏捷性(アジリティ)トレーニング

 ラダードリルや反応ドリルで、方向転換や切り返しのスピードを磨きます。

・瞬発力トレーニング

 ジャンプ系のトレーニングやメディシンボールスローなど、素早く大きな力を発揮する力を鍛えます。

・持久力トレーニング

 インターバルトレーニングやランニングなどで、試合の後半まで動き続けられる体を作ります。

・コーディネーショントレーニング

 動きの連動や、視覚・聴覚への反応を高めることで、技術の再現性や判断の速さを向上させます。

これらを組み合わせることで、単に筋肉を増やすだけでなく、競技中にその筋力を「うまく使える」状態を作ることができます。

組み合わせ方がトレーニングの質を左右する

例えば、ベンチプレスだけをやるよりも、腕立て伏せからメディシンボールスロー、さらに体幹トレーニングを組み合わせる方が、競技動作に近い形で力の発揮・伝達・安定を養えます。

トレーニングの質は、どのような刺激を、どういう順番で、何を目的に行うかで決まります。重さだけでなく、スピードや不安定な状況、疲労がたまった状態など、さまざまな条件の中で体をコントロールする力が必要です。

また、実戦では「複雑な状況」での判断や動きが求められるため、練習でも「単純な動き」だけでなく、「応用力を鍛える動き」が欠かせません。

限られた時間でも成果を出すには?

学生生活では、部活以外にも授業や宿題があり、時間は限られています。

だからこそ、一つひとつの練習に意味を持たせ、効率の良い組み合わせで取り組むことが大切です。

例えば以下のような短時間トレーニングでも十分に効果があります。

・ラダーとジャンプを組み合わせた5分間の敏捷トレーニング

・スクワットとスプリントを交互に行うインターバルサーキット

・片足バランスとパスキャッチを組み合わせたコーディネーショントレーニング

時間がないときほど、「何を鍛えるか」を明確にして取り組むことで、トレーニングの質を高めることができます。

まとめ:筋力だけでなく、動ける身体を育てよう

筋トレというと、重りを持ち上げるトレーニングを思い浮かべがちですが、実際にはそれだけでは不十分です。

本当に競技力を高めたいなら、バランス・瞬発力・持久力・敏捷性・反応力といった要素を含めた、多面的なトレーニングが必要になります。

一つの能力だけを高めるのではなく、体をトータルで鍛えていくことで、技術がより活きてくるようになります。

今のうちから、競技に使える身体を計画的に育てていきましょう。それが、将来の飛躍につながります。