1. 100m走でも呼吸は関係ある

100m走は「無酸素運動」と思われがちですが、実際には約20%は酸素を使った有酸素運動も関わっています。

つまり「どう呼吸するか」は、走っている最中だけでなく、走る前や走り終えた後も含めて大きな意味を持ちます。

2. 走行前の呼吸 ― 酸素の準備と心身の安定

スタートの数十秒前から「呼吸の仕方」を意識することは非常に重要です。

  • 酸素の貯金
    深い呼吸を繰り返すことで血液中の酸素をしっかり満たし、走行中の酸素供給に余裕を持たせる。
  • 緊張を和らげる
    吸うよりも「長く吐く」呼吸を行うと、副交感神経が働きすぎを抑え、過度な緊張を防ぐ。
  • 集中力を高める
    呼吸に意識を向けることが「ルーティン」となり、雑念を減らしてスタートへの集中を助ける。

実際、多くのトップスプリンターはスタート前に深呼吸を取り入れており、それが最高のパフォーマンス準備につながっています。

3. スタート直後の息止め

最初の数歩は息を止めて力を爆発させる選手が多いです。

これは「バルサルバ効果」と呼ばれ、体幹の圧力を高めて地面に強い力を伝えられるからです。

ただし長く息を止めすぎると酸欠やフォーム崩れのリスクがあるため、加速が安定したら自然に呼吸を再開することが重要です。

4. 中盤はリズムを意識

加速が終わってスピードを維持する中盤では、呼吸と走りのリズムを合わせるのがポイントです。

例:2歩で吸って2歩で吐く、といった浅いリズム呼吸。

「吐くこと」を意識すると肩や首の余計な力が抜けて、スムーズに走りやすくなります。

5. 終盤は吐きながら耐える

ラスト30mは乳酸が一気に溜まり、苦しくなってきます。

ここで息を止めてしまうと体が固まり、ピッチやストライドが崩れてしまいます。

「浅くてもいいから吐きながら耐える」ことで、スピードをできるだけ維持できます。

6. ゴール後は回復呼吸

走り終えた直後は「酸素負債」を返すために呼吸が乱れます。

このときは、

  • 大きく吸って長く吐く
  • 歩きながら呼吸を整える
    ことで血流が良くなり、乳酸の処理も早く進みます。

まとめ

  • 100m走は無酸素が中心だが、20%ほどは酸素も使う
  • 走行前の深い呼吸は、酸素の準備・緊張緩和・集中力アップに不可欠
  • スタート直後は息止めで爆発力
  • 中盤はリズム呼吸でリラックス
  • 終盤は吐きながら耐える
  • ゴール後は深く吸って長く吐くことで回復

呼吸はただの「酸素の出し入れ」ではなく、走る前から走った後までパフォーマンスを支える戦略です。意識するだけで、タイムも走りやすさも大きく変わります。