「トレーニングは質が大事」とよく言われます。
実際、お客様や保護者の方からも「何をしたらうまくいく?」「このトレーニングで本当に効果が出る?」と、方法や内容に関する質問をよくいただきます。
もちろん、質の高いトレーニングを行うことは非常に大切です。
しかし、それだけでは“完璧”とは言えません。特に成長期の子どもたちにおいては、「質」だけにこだわりすぎると、かえって成長のチャンスを逃してしまう可能性すらあります。
この記事では、成長期のトレーニングにおける「量」と「質」の考え方について、現場の視点から解説していきます。
成長期の身体は毎日変わる
成長期の子どもたちの身体は、日々変化しています。
身長が伸び、体重が増える――目に見える変化だけでなく、筋力や神経、関節の柔軟性など、運動に関わるあらゆる要素が刻々と変化しています。
たとえば、同じジャンプやスクワットの動作でも、身長が数センチ伸びたことでバランス感覚が変わることがあります。
体重が増えれば、それを支えるだけの筋力や安定性も必要になります。
そのため、成長期のトレーニングには「これをやっておけばOK」といった正解はありません。
変化する身体に合わせて、多様な刺激を与えることが非常に重要です。
特定の種目にこだわるよりも、いろいろなメニューを取り入れ、身体の適応力を高めていくことが、結果的に大きな成長につながります。
「筋肉をつける」よりも「身体を動かすルートを増やす」
特に小学生~中学生前半くらいまでの選手にとって、**筋肉を大きくするトレーニング(筋肥大)**は実はあまり現実的ではありません。
理由はシンプルで、成長段階にある身体は、筋肉をつけるために必要なホルモンや体格がまだ未発達だからです。
また、トレーニングフォームも未熟なことが多いため、無理に負荷をかけたトレーニングをすると姿勢の崩れや分離症(腰椎の疲労骨折)などのリスクが高くなります。
この時期に大切なのは、“動作の多様性”を獲得することです。
ジャンプ、回転、片足支持、腕の支持、体幹の安定など、様々な動きを経験し、脳と筋肉をつなぐ神経回路をたくさん作ることが、その後の技術や筋力のベースになります。
まずは「量」をこなすことで、身体が育つ
「質が大事」という考え方は間違っていません。
ただ、成長期においては、ある程度の“量”をこなすことでしか得られない感覚や強さがあります。
例えば、スクワットのフォームを徹底的に確認しながら5回だけやるよりも、まずは正確性をある程度意識しながらも20回×3セットこなすことのほうが、筋力・心肺・動作の習得においては大きな効果があるケースも多いです。
量をこなす中でフォームが崩れてきたら、そこから質の改善ポイントが見えてくる。
量があるからこそ、質が活きる――それが、成長期のトレーニングで意識しておきたいポイントです。
まとめ:量と質、どちらも大事。でも「量」から始めよう
成長期の選手にとって、「量をこなすこと」と「質を意識すること」のバランスはとても重要です。
ただし、最初から質にこだわりすぎて行動量が減ってしまっては本末転倒です。
まずはたくさん身体を動かすこと。いろんな動きを経験すること。
その中で「どう動いたらいいか」「この動きはもっとこうしよう」という“質”を見出していくのが、自然なトレーニングの流れです。
これからの練習やトレーニングを考える際は、ぜひ「まず動く!」という視点を大切にしてください。
量をこなした先に、質のある身体と動きがきっと育っていきます。