サッカーでは、試合の後半になると多くの選手が疲労によりパフォーマンス低下を経験します。

しかし、トップレベルのプレーでは、90分間全力で走り、切り返しやスプリントを維持できる選手が多くいます。

これは決して根性や精神力だけの問題ではありません。

筋肉や心肺、神経系の体の適応によって、疲労状態でも力を発揮できる体を作ることができるのです。

ここで重要なのが、「追い込む練習」です。

ただボールを蹴る、走るだけではなく、体を限界近くまで動かす練習を行うことで、試合後半でも最大のパフォーマンスを出せる体を作ることができます。

以下では、追い込む練習がもたらす具体的な効果と科学的メカニズムを解説します。

1. 筋力・瞬発力の維持

疲労が蓄積すると、筋肉の収縮力や瞬発力は低下します。

これは、筋線維内でのカルシウム放出やATP供給が減少することによる現象で、疲れた状態ではボールを強く蹴ったり、全力でスプリントすることが困難になります。

追い込む練習を行うことで、筋肉の収縮効率や神経筋の協調性が向上します。

具体的には、疲労状態でも筋線維を効果的に動員できるようになり、瞬間的な力を発揮しやすくなります。

例えば、疲れている試合後半でも、切り返しやシュート動作で必要な大腿四頭筋・ハムストリングス・臀筋群の連動が維持できるようになります。

このように、筋力・瞬発力の維持は単に筋肉を大きくするだけではなく、神経系を含めた運動機能の適応が重要です。

2. 持久力の向上

サッカーは90分間動き続けるスポーツであり、試合中に高強度のスプリントや切り返しを繰り返すためには、持久力も不可欠です。

追い込む練習では、有酸素系・無酸素系の双方を強化できます。

高強度インターバルトレーニングや、連続スプリントの追い込みにより、心臓や肺のポンプ機能が向上し、血液循環と酸素供給能力が高まります。

これにより、筋肉への酸素供給と代謝産物の除去が効率的になり、疲れてもスプリントや切り返しが維持できるのです。

また、持久力の向上は試合終盤だけでなく、前半から中盤にかけての高強度プレーの質も安定させる役割を持ちます。

3. 疲労耐性の向上

追い込む練習には、疲労物質(乳酸や無機リン酸など)への耐性を高める効果があります。

筋肉が疲労物質に強くなることで、精神力ではなく体の能力で最後まで動ける状態が作れます。

具体的には、同じスプリントや切り返しの動作を繰り返しても、筋線維の働きが低下しにくくなり、筋収縮の効率を保つことができます。

また、神経系も疲労に強くなり、試合終盤でも正確な判断や素早い反応が維持されます。

このように、追い込む練習は単に筋肉を強くするだけではなく、疲労環境下でのパフォーマンス維持能力を科学的に高める手法なのです。

まとめ

追い込む練習のメリットを整理すると以下の通りです。

  • 筋力・瞬発力の維持 → 疲れてもボールを強く蹴る・全力で走る
  • 持久力の向上 → 90分間動き続けられ、スプリントや切り返しが維持できる
  • 疲労耐性の向上 → 体が疲労に強くなり、精神力に頼らず最後まで動ける

つまり、追い込む練習は根性ではなく、体の適応メカニズムに基づく科学的強化です。

筋力・持久力・疲労耐性を同時に高めることで、試合後半でも最大限のパフォーマンスを発揮できる体を作ることができます。

学生やアマチュアサッカー選手にとっても、試合で最後まで動ける体を作るには、追い込む練習を計画的に取り入れることが不可欠です。

練習強度や量を適切に設定し、科学的に体を追い込むことで、勝負どころでの力を確実に出せる体を手に入れましょう。