ランニングや陸上競技の練習中に「鎖骨のあたりが痛い」と感じる選手は少なくありません。
特に長距離走やインターバルトレーニングの後半で痛みが強まるケースが多く、練習の質やパフォーマンスに影響を及ぼします。
鎖骨は単なる骨ではなく、上肢と体幹をつなぐ重要な橋渡しの役割を担っており、その周囲には多くの筋肉・神経・靭帯が走行しています。
本記事では、ランニング時に鎖骨周囲に痛みが出る原因を解説し、陸上競技者に向けた具体的な対策を紹介します。
鎖骨の役割と特徴
鎖骨(clavicle)は胸骨と肩甲骨をつなぐ唯一の骨であり、上肢を自由に動かすための支点となります。
また、鎖骨の周囲には以下の重要な構造が存在します。
- 胸鎖関節・肩鎖関節:肩の可動域を確保
- 大胸筋・僧帽筋・三角筋・鎖骨下筋:肩の安定性を保持
- 神経や血管:腕への神経支配や血流の通り道
したがって、ランニングで繰り返し腕を振る動作は、この部位に大きなストレスを与える可能性があります。
ランニングで鎖骨周囲が痛くなる主な原因
1. 姿勢不良による筋緊張
長時間のランニングで猫背姿勢や肩の巻き込みが強くなると、大胸筋や鎖骨下筋が過緊張し、鎖骨周囲の違和感につながります。
2. 腕振りのフォーム不良
肩関節を過度に振りすぎたり、肘が外に開く「バタついたフォーム」は、鎖骨周囲の筋肉を不自然に引っ張り続けます。
3. 呼吸の乱れによる胸郭の硬直
ペース走やインターバルで呼吸が荒くなると、鎖骨下筋や斜角筋など呼吸補助筋が過剰に働き、痛みを引き起こすことがあります。
4. 骨や関節の微細なストレス
過去に肩の脱臼や骨折歴がある場合、ランニングの衝撃で鎖骨や肩鎖関節に再度ストレスが集中することがあります。
陸上競技における具体的な対策
1. フォーム改善
- 胸を開いて走る
肩をリラックスさせ、軽く後ろに引く意識を持つと、鎖骨周囲の緊張を軽減できます。 - 腕振りを前後方向に統一
肘を脇に近づけ、体の正面で交差させないようにする。
2. ストレッチ・モビリティ
- 胸郭ストレッチ(胸を張り、両腕を開く)
大胸筋の緊張を緩め、呼吸を楽にする。 - 肩甲骨回し
前後に大きく肩を回し、肩甲帯の可動性を改善。 - 鎖骨下筋ストレッチ
鎖骨の下に指を当て、軽くマッサージすることで圧迫感を軽減。
3. 筋力トレーニング
- 肩甲骨安定筋(僧帽筋下部・菱形筋)の強化
例:プランク+ショルダータップ、セラバンドでのローイング - 体幹トレーニング
体幹が安定すれば腕振りが安定し、鎖骨への負担も減少。
4. 呼吸法の改善
- 腹式呼吸を意識して胸郭に過度な負担をかけない
- リズム呼吸(3歩吸って2歩吐くなど)で過緊張を抑える
競技現場での即時対応
- 走行中に痛みを感じた場合
フォームを一度整え、深呼吸を数回行う - 練習後のケア
アイシングで炎症を抑える/フォームローラーで胸郭周囲を解す
まとめ
ランニングで鎖骨のあたりが痛くなる背景には、姿勢の乱れ・腕振りのフォーム不良・呼吸による筋緊張など、複合的な要因が関わっています。
陸上競技者にとって、鎖骨周囲の痛みは走りの効率を低下させるだけでなく、肩関節や胸郭の機能障害へ発展するリスクもあります。
そのため、
- フォームの見直し
- 胸郭・肩甲骨の可動性改善
- 筋力・体幹トレーニング
を組み合わせた包括的なアプローチが求められます。
鎖骨の痛みを軽視せず、早期に原因を把握し対策することで、より安定したフォームで走り続けることができるでしょう。


