「今日からダイエットを始めよう!」「とにかく汗をかけば痩せるはず!」
そんな思いから、いきなり長時間のランニングやハードなバイクトレーニングに挑戦する方も多いのではないでしょうか。
確かに有酸素運動は健康や脂肪燃焼に効果的な運動ですが、いきなりキツすぎる強度で行うのは逆効果になる可能性があります。今回は、専門的な視点からその理由を解説していきます。
① 自律神経が乱れて疲れやすくなる
強すぎる有酸素運動を突然行うと、交感神経(興奮・緊張を司る神経)が一気に活性化し、心拍数や血圧が急上昇します。
本来は運動後に副交感神経(リラックスモード)が働いて体を落ち着かせますが、このバランスが崩れてしまうと、いつまでも身体が“緊張状態”から抜け出せず、疲れが抜けにくい状態になります。
自律神経の乱れは、睡眠の質の低下・集中力の低下・イライラといった不調にもつながるため、注意が必要です。
② 活性酸素が増えて細胞が傷つく
激しい運動では大量の酸素を体内で使うことになり、活性酸素(フリーラジカル)という物質が多く発生します。
活性酸素は、本来ウイルスを攻撃するなどの大切な働きもありますが、増えすぎると筋肉や細胞を傷つけてしまうため、老化や免疫力の低下、疲労感の原因になります。
とくに、準備ができていない体に強い刺激を与えると、酸化ストレスが一気に高まり、回復しにくい状態になります。
③ コルチゾール(ストレスホルモン)が過剰に分泌される
キツすぎる運動は体にとって“ストレス”となり、ストレスホルモンの一種であるコルチゾールが多く分泌されます。
コルチゾールの本来の役割は、血糖値の維持・炎症の抑制・ストレスへの適応といった体を守る機能です。
しかし、運動強度が高すぎるとコルチゾールが過剰に分泌されてしまい、筋肉を分解してエネルギーに変えたり、脂肪をため込みやすい体質へと変化させてしまうことがあります。
結果として、「運動しているのに太りやすくなった」「筋肉が落ちて疲れやすくなった」と感じるケースもあるのです。
④ 心臓や血管に急な負担がかかる
運動前にウォームアップもせず、いきなり激しい運動を始めると、心臓や血管に急激な負荷がかかります。
特に運動不足の方や中高年の方は、急な心拍上昇が不整脈や血圧の乱れ、最悪の場合は心疾患のリスクに繋がることも。
運動は健康のために行うものですが、やり方を間違えると健康を害してしまうリスクがあることも忘れてはいけません。
⑤ エネルギー切れでパフォーマンスが下がる
キツすぎる運動では、筋肉内のエネルギー源であるグリコーゲンやATPが短時間で大量に消費されます。
これにより、低血糖状態に近づき、ふらつき・脱力感・頭がぼーっとするなどの症状が出やすくなります。
運動後に「力が入らない」「集中できない」と感じた経験がある方は、このようなエネルギー枯渇が原因かもしれません。
正しく運動するためのポイント
いきなりキツい運動ではなく、以下のような方法で運動をスタートするのがおすすめです。
- ウォームアップを取り入れ、体を徐々に温める
- 心拍数が上がりすぎないペースで20〜30分の運動から始める
- 週1~2回から無理なくスタートする
- 日によってはストレッチや軽い筋トレだけでもOK
まとめ:大切なのは「継続できる運動」
頑張っているつもりでも、体にとっては負担が大きすぎて逆効果になることがあります。特に体力や運動経験に自信がない方は、「軽めの運動を定期的に続ける」ことが、健康にもダイエットにも最も効果的です。
運動は「多ければいい」「キツければ効く」というものではありません。
自分の体の状態をよく観察し、無理のない範囲で、質の高い運動習慣をつくっていきましょう。