野球の守備は、一球ごとに状況が変わり、思い通りにならないことばかりです。
打球はバウンドが変わる、送球は逸れる、走者は想定外のスタートを切る。
そんな“不測の事態”に対処できるかどうかは、プレー前に頭を整理して準備していたかどうかで決まります。
守備は「反応力」ではなく「準備力」。プロの現場では必ず、毎球「次に何が起こり得るか」を整理してから構えるのです。
ここでは守備時に整理すべき基本の考え方と、不測に備える思考法をまとめます。
1. 守備の基本OS(思考の基盤)
プレーごとに頭をリセットして考える“守備のOS”は次の順序です。
- アウトカウント
- 走者状況(フォースかタッチか、優先する塁はどこか)
- 打者の特徴(足、打球方向、配球傾向)
- 自分の一歩目(初動の角度)
- 送球先の第一候補と第二候補
- 味方が捕った場合に自分が取る役割(カバー、バックアップなど)
これを頭の中で毎球確認することで、判断に迷わなくなります。
2. 場面別の整理ポイント
無走者
最短は一塁アウト。外野は二塁送球の中継位置を意識。
一塁走者
基本はゲッツー発想。打球の強弱で「二つ狙うか一つで終えるか」を明確に。
二塁走者
内野はホーム阻止ライン、外野はバックホームを優先。カットプレーを誰が主導するかを決めておく。
一・三塁
失点を防ぐのか、併殺を狙うのか。事前に統一しておかないと混乱が起きる。
満塁
どこでもフォース。内野ゴロは最短でホーム→一塁。フライはバックホームを最優先。
3. IFツリー思考(もし〜ならの準備)
「もしこうなったら、次はこうする」と分岐を作っておくことで“不測”を想定内に変えます。
- もし弾いたら → 最短で一つアウト
- もし悪送球になったら → バックアップの動線へ走る
- もしスクイズなら → 三塁手チャージ、投手は本塁前カバー
- もし外野が打球を見失ったら → 内野は進塁阻止の次点塁へ
事前にイメージしておくことで、動きが自然に出ます。
4. コミュニケーションの重要性
準備があっても声がなければ機能しません。
- 「カット!」「スルー!」「ホーム!」など、短い言葉を統一する。
- 誰が指示するかを決めておく(例:送球カットは遊撃、バックホームは捕手)。
- 指示は早く、大きく、一回で通す。
これにより、守備はシンプルになります。
5. 実戦に向けた練習
- シナリオ守備練習:コーチが状況をコールし、全員が声と動きで対応。
- 挟殺2投以内ルール:挟殺プレーを短い投球回数で終える習慣。
- 悪送球カバー練習:あえて逸らしてバックアップ動作を体に覚えさせる。
まとめ
守備で大切なのは「反応」より「準備」です。
アウトカウント、走者、打球傾向を毎球OSのように整理し、もし〜ならの分岐(IFツリー)を頭に入れておく。
そうすれば不測の事態は減り、たとえ起きても「想定内」として冷静に処理できます。
守備のうまい選手は必ず「準備のうまい選手」なのです。