「コーチに言われた通りにやっているつもりなのに、いつも指摘される」

「頭では理解しているけれど、実際には動けない」

――そんな経験、バスケットボールをプレーする学生選手なら誰もが感じたことがあるのではないでしょうか?

実は、この“指導と動作のズレ”は、選手だけの問題ではありません。指導者と選手の理解や感覚、身体能力などさまざまな要因が複雑に絡み合っているのです。

ここでは、バスケットボール指導において見られるこのズレの原因と、その背景にあるポイントについて解説します。

指導が実際の動作にうまく反映されない理由とは

1. 言葉とイメージのズレ

  • コーチの意図したイメージが、選手に正しく伝わっていない可能性があります。
  • 例:「もっと間を詰めてディフェンスしろ」→選手によって「位置の問題」なのか「姿勢や体の向きの問題」かの解釈が変わることも。

2. 身体的な能力の不足

  • スライドステップやクローズアウトなど、基本動作を理解していても、筋力・柔軟性・バランス能力が不足している場合、思うように動けないことがあります。
  • 「できない」=「理解していない」とは限らない点に注意が必要です。

3. 指導内容が選手の段階と合っていない

  • 戦術理解が乏しい選手に、複雑なセットプレーを要求しても無理があります。
  • 技術・戦術とも、段階的に“選手の習熟度”に合わせた指導が不可欠です。

その他に考えられる要因

4. 指導者と選手の学習スタイルの違い

  • コーチが言語中心で説明するタイプでも、選手が視覚情報(デモンストレーションや動画)で理解するタイプなら、伝わりにくいことがあります。
  • 選手のタイプに応じて、言葉・映像・実演を組み合わせた指導が効果的です。

5. 指導者の経験則をそのまま当てはめている

  • コーチの「自分が選手時代できたプレー」が、今の選手にも通用するとは限りません。
  • 個々の体格やセンス、プレーの感覚が異なるという前提で接することが重要です。

6. 心理的プレッシャーによる動きの硬直

  • 緊張や失敗への恐れから、選手が本来の動きを出せていないケースもあります。
  • 指導の語調やタイミングによって心理面が変化し、パフォーマンスに影響を及ぼすことも。

指導者が押さえておきたい視点

指導者は“知識や経験を押し付ける存在”ではなく、“選手を導く存在”です。すべてが正しいとは限らず、選手の反応を見ながら柔軟に指導を変化させる必要があります。

  • 個人差を理解し、「正しい型」よりも「その選手に合った型」を追求する。
  • 説明だけでなく、プレーの根拠や理由を理解させる(納得が技術定着を高める)。
  • 指導者自身も学び続ける姿勢を持ち、選手とともに成長する。

おわりに

バスケットボールにおける指導と動作のズレは、「選手」と「指導者」双方の理解を深めることで、確実に縮めることができます。

選手は、自分の身体の状態や理解度を自覚し、なぜできないのかに向き合うこと。

指導者は、選手の特徴や状態を観察し、それに合った言葉や方法で伝えること。

その積み重ねが、チーム力の向上と選手の成長につながります。互いに歩み寄り、より良い指導の形を築いていきましょう。