サッカーは単に走るだけのスポーツではありません。

試合中、選手は短いスプリントを繰り返したり、急に方向を変えたり、時には長い距離を走り続けたりします。

そのため、学生のトレーニングでもさまざまな走り方を身につけることが重要です。

走り方の違いは、体が使うエネルギーのシステムとも関係しています。体は距離や時間に応じて異なる方法でエネルギーを作り出し、動きを支えています。

スプリント(短距離ダッシュ)は瞬発力のカギ

ゴール前の一瞬のチャンスや相手を抜く瞬間には、全力のスプリントが必要です。

このとき主に使われるのはATP-PC系(アデノシン三リン酸-クレアチンリン酸系)です。

ATP-PC系は体内にあるATP(アデノシン三リン酸)とクレアチンリン酸を使って、すぐに大きな力を生み出すシステムです。

ATPは体のエネルギーの直接源ですが、体内に貯蔵される量はわずかで、すぐに使い切ってしまいます。

そこでクレアチンリン酸がATPを再合成する役割を果たし、約5~10秒間の全力運動を支えます。

つまり、短距離ダッシュやジャンプ、素早い切り返しなど、一瞬の爆発力が必要な動きではATP-PC系が中心となり、瞬発力を最大限に発揮できます。

切り返し(方向転換)は敏捷性アップ

サッカーでは相手ディフェンスをかわすために急に方向を変える場面が多くあります。

この動きには瞬発力が必要ですが、10秒以上続く繰り返しの切り返しでは解糖系が関与します。

解糖系は筋肉に貯蔵されたグリコーゲンを使ってATPを生成するシステムです。

酸素をほとんど使わず、10秒~2分程度の中強度運動に対応できます。

運動中に乳酸を生成しますが、それにより筋肉に短時間でエネルギーを供給できます。

切り返しや中距離スプリントを繰り返す動きでは、この解糖系の能力が試合での動きを左右します。

10m・20m・50m走は実戦の距離感を意識

試合中に選手が全力で走る距離はさまざまです。

10m前後はパスに合わせた短いダッシュ、20m前後は中距離の駆け引きやボール追跡、50m前後はカウンター攻撃やスペースへの抜け出しにあたります。

10~50mの走りはATP-PC系と解糖系の両方を使い分ける距離です。

短距離では瞬発力を発揮するATP-PC系が中心ですが、やや長めのスプリントでは乳酸の生成を伴う解糖系が関わります。

そのため、短距離スプリントだけでなく、少し長めの距離での繰り返しダッシュもトレーニングに取り入れることが重要です。

400m・1.5kmは持久力を支える基礎

短距離スプリントだけでは、90分間の試合を走り切ることはできません。

400mや1.5kmのランニングでは有酸素系が中心となります。

有酸素系は酸素を使って脂肪や糖を分解しATPを生成するシステムで、長時間にわたり安定してエネルギーを供給できます。

心肺機能を高めることで、疲労時でも解糖系の回復が早くなり、短距離スプリントを繰り返す力が向上します。

持久力があることで、試合終盤でも切り返しやスプリントを維持できるのです。

まとめ

サッカーの走りは単純な距離ではなく、体のエネルギーシステムの組み合わせで成り立っています。

ATP-PC系は瞬発力の爆発的な動きに、解糖系は中距離スプリントや繰り返し動作に、有酸素系は長時間の持久力に関わります。

トレーニングでは短距離ダッシュ、切り返し、10~50mの中距離、さらに400m・1.5kmの持久走をバランスよく取り入れることで、スピード・敏捷性・スタミナをすべて向上させることができます。

試合で「あと一歩動ける」「相手より速く動ける」瞬間をつかむためには、走りの多様性とエネルギーシステムの理解が欠かせません。