バレーボールのパフォーマンス向上において、「ジャンプ力」は試合の勝敗を左右する重要な要素です。

しかし、ジャンプの形態によって筋力発揮の仕方は大きく異なります。

特にスパイクに用いる片脚踏切と、ブロックに用いる両脚踏切では、使う筋肉や求められる力の特性が異なるため、学生選手には正しいトレーニングの導入が不可欠です。

片脚踏切と両脚踏切の筋力発揮の違い

片脚踏切(スパイク助走)の特徴

スパイクの助走から行うジャンプは、通常利き脚を使う片脚踏切が中心です。この踏切では、片脚で地面を強く押す力(瞬発力)と、体幹の安定性が極めて重要になります。

筋肉の関与
大腿四頭筋、ハムストリングス、下腿三頭筋(ふくらはぎ)の協調が必須。特に片脚で支えるため、片脚大腿四頭筋の発揮力が高く求められます。
力の発揮特性
力を一瞬で爆発的に発揮する「瞬発的伸張-短縮サイクル(SSC)能力」が勝負の鍵。助走の勢いを利用して垂直跳びや前方ジャンプに変換する能力が重要です。

両脚踏切(ブロック)の特徴

ブロック時のジャンプは、基本的に両脚で同時に踏み切る両脚踏切です。こちらは静止状態や少ない助走からの垂直跳びになることが多く、片脚踏切とは異なる筋力特性が求められます。

筋肉の関与
両脚で地面を押すため、大腿四頭筋・下腿三頭筋・臀筋群の総合的な出力が重要です。体幹や背筋もジャンプの安定性に直結します。
力の発揮特性
「短時間での最大筋力発揮能力(最大瞬発力)」が重要。助走がない分、地面反力を効率よく筋力に変換する力が求められます。

筋力トレーニングの分け方

片脚踏切向けトレーニング

片脚踏切は瞬発力と連動性が命です。学生でも取り入れやすいメニューとしては以下が効果的です。

片脚ジャンプ系ドリル
片脚立ちジャンプ(高く跳ぶ)
箱跳び(片脚で踏み切るタイプ)
跳躍後の着地で体幹保持
→ 助走からの力の変換、片脚支持力、体幹安定性を同時に鍛える

プライオメトリクス
片脚スクワットジャンプ
片脚ステップジャンプ
→ SSC能力を向上させ、爆発的な踏切力を養成

片脚筋力補強
片脚スクワット
ブルガリアンスクワット
→ 大腿四頭筋・ハムストリングス・臀筋のバランス強化

両脚踏切向けトレーニング

両脚踏切は最大筋力と垂直反発力がポイント。助走が少ない状況でも高く跳ぶ能力を養います。

両脚ジャンプ系ドリル
スクワットジャンプ
ボックスジャンプ(両脚で踏み切る)
→ 垂直ジャンプ力の強化

ウェイトトレーニング
バックスクワット
デッドリフト
→ 下肢全体の最大筋力を向上させ、踏切時の地面反力を最大化

反応ジャンプドリル
バスケットボール式リアクションジャンプ
瞬間的に飛ぶ能力を養うジャンプドリル
→ 試合中のブロック反応速度向上

練習で意識したいポイント

踏切の前の体重移動を意識
片脚踏切は助走の勢いを地面反力に変換、両脚踏切は静止状態での効率的な力発揮
体幹の安定
ジャンプ中に体幹が崩れると踏切力が半減
左右差の補正
片脚踏切で利き脚だけに頼らないよう、非利き脚も鍛える

まとめ

学生バレーボールにおけるジャンプ力向上は、単純に「高く跳ぶ」だけでは不十分です。スパイクの片脚踏切とブロックの両脚踏切では筋力の使い方が根本的に違うため、それぞれに応じた専門的トレーニングが必要です。

片脚踏切:瞬発力・体幹・SSC能力重視
両脚踏切:最大筋力・垂直反発力重視

この区別を理解し、日々の練習に取り入れることで、スパイクもブロックも「跳べる力」を最大化でき、試合でのパフォーマンスに直結します。