陸上競技の練習は、全力疾走や跳躍、インターバル走など高い負荷がかかるものが多く、筋繊維には細かな損傷が生じます。

これはパフォーマンス向上のために必要な刺激ですが、回復が遅れると疲労が蓄積し、故障や記録の停滞につながります。

重要なのは「練習後のリカバリーをいかに最適化するか」です。

ここでは、科学的な知見をもとに、陸上選手が実践すべき具体的なリカバリー法をまとめます。

1. 練習直後の対応-ゴールデンタイムを逃さない

高負荷練習直後は、筋肉に栄養を届けるスピードが勝負です。運動後30分以内は「ゴールデンタイム」と呼ばれ、栄養補給と体温調整を行うことで回復速度が大きく変わります。

  • クールダウン:軽いジョグやストレッチで血流を維持し、老廃物を流す。
  • 栄養補給:炭水化物とタンパク質を2:1の比率で摂取。例:おにぎり+プロテイン、バナナ+ヨーグルト。
  • 水分と電解質:発汗で失ったミネラルを補給し、筋痙攣や疲労感を防ぐ。

2. 数時間以内のケア-炎症を抑えつつ修復を促す

高強度のスプリントや跳躍は筋繊維に微細な炎症を引き起こします。これを放置すると筋肉の張りや痛みが長引きます。

  • アイスバスや冷水シャワー:血流を一時的に収縮させ、炎症を抑える。
  • コンプレッションウェア:着用により血液循環を促進し、代謝産物の排出を助ける。
  • 軽いマッサージやフォームローラー:筋膜リリースで筋肉の緊張を和らげる。

3. 睡眠とホルモン分泌-最強のリカバリーツールは「眠り」

睡眠中に分泌される成長ホルモンは、筋損傷の修復を加速させます。練習量が多い時期ほど「質の高い睡眠」がパフォーマンスを左右します。

  • 最低7〜8時間の睡眠:深いノンレム睡眠の確保が重要。
  • 寝る前のストレッチや呼吸法:副交感神経を優位にし、眠りの質を高める。
  • 就寝2時間前までに食事を済ませる:胃腸を休め、成長ホルモン分泌を妨げない。

4. 翌日以降のリカバリー -「休養=完全停止」ではない

疲労が残った状態で無理をすれば怪我のリスクが高まりますが、完全に休むより「アクティブリカバリー」が効果的です。

  • 軽いジョグやスイム:血流を促進し、老廃物の除去を加速。
  • モビリティドリル:股関節や足首を動かし、筋肉のこわばりを防ぐ。
  • 栄養の継続補給:タンパク質をこまめに摂取し、筋修復を持続させる。

まとめ

陸上競技では、練習の質と同じくらい「リカバリーの質」がパフォーマンスを左右します。

  • 練習直後:栄養とクールダウンで回復の土台をつくる
  • 数時間以内:冷却や圧迫で炎症を抑え、血流を促す
  • 睡眠:成長ホルモンによる修復を最大化する
  • 翌日以降:アクティブリカバリーで疲労を抜きつつ動きを保つ

これらを徹底することで、筋損傷の修復速度が上がり、翌日の練習効率も飛躍的に向上します。リカバリーを「特別な作業」ではなく「練習の一部」として捉えることが、シーズンを通して高いパフォーマンスを維持するための鍵になります。