中長距離走では、最後の200〜400mの勝負どころで「粘れるかどうか」が順位を左右します。
序盤や中盤で余裕があっても、ラストで脚が動かなくなったり、呼吸が追いつかず失速してしまう選手は多いはずです。
ここで必要になるのが 筋持久力(脚が最後まで動く力) と 心肺持久力(酸素を運び続ける力) の両立です。
ラストスパートで起こる身体の限界
• 脚の疲労:繰り返すストライドで太ももやふくらはぎに乳酸が溜まり、脚が重くなる
• 呼吸の乱れ:酸素を十分に取り込めなくなり、リズムが崩れる
• フォームの崩れ:体幹が支えきれず、骨盤が沈みピッチが落ちる
• 集中力の低下:苦しさに耐えられず動きが雑になる
つまり「脚の筋持久力」と「心肺の持久力」が同時に問われる局面こそ、ラストスパートなのです。
筋持久力の役割
• 長時間動いても脚の反発を維持できる
• ピッチ(回転数)を落とさず、接地時間を短く保てる
• 骨盤の安定が最後まで続くことでフォームが崩れにくい
筋持久力が弱いと、脚が鉛のように重くなり、加速したい場面でストライドもピッチも維持できません。
心肺持久力の役割
• 酸素を効率よく取り込み、乳酸を処理する
• 長いレースでも心拍数を安定させ、最後に余力を残す
• 疲労で動きが乱れても呼吸リズムを崩さず走れる
心肺持久力が不足すると、いくら脚が動いても呼吸が追いつかず、ラストで体が動かなくなります。
両立させるためのトレーニング方法
1. インターバル走(心肺+筋持久力)
• 400m × 6〜8本(リカバリー90秒ジョグ)
• 高い心拍数で走り続け、脚にも負荷をかける
• ラストスパートの「苦しい局面」を再現
2. ビルドアップ走(心肺の強化)
• 30分走で5分ごとにペースを上げる
• 最後は試合のラストスパートと同じ強度で走り切る
• 長い距離で「余力を残しつつ上げる感覚」を養う
3. 筋持久力サーキット
• スクワットジャンプ、ランジ、体幹プランクを組み合わせ、休憩少なめで連続実施
• 脚と体幹に疲労がある状態での動作制御を強化
4. レースペース走+加速フィニッシュ
• レースを想定したペースで2000〜3000m走り、最後の200mだけ全力加速
• 実戦に近い形で「ラストで脚を回す感覚」を体に覚えさせる
学生世代が意識すべきポイント
• 脚だけ鍛えても不十分:筋トレや坂ダッシュは有効だが、呼吸が苦しくなると脚が動かなくなる
• 心肺だけ鍛えても不十分:ジョグやLSDで持久力を養っても、ラストで筋力が切れたら失速する
• 両方を同時に高める練習が、ラストスパート耐性には必須
特に学生世代は発育段階で心肺機能や筋力が大きく伸びる時期。「走る練習」と「筋トレ・体幹強化」を並行することが効果的です。
まとめ
• 中長距離のラストスパートでは、脚の「筋持久力」と心肺の「持久力」が同時に試される
• 筋持久力はフォームを崩さず脚を回し続ける力、心肺持久力は酸素を運びきりリズムを維持する力
• インターバル走・ビルドアップ走・筋持久力サーキット・レースペース走+加速を組み合わせると効果的
• 学生世代は特に、脚と心肺のバランス強化を意識することで「最後に粘れる選手」へと成長できる