テニスはスプリント、ストップ&ゴー、方向転換、サーブやスマッシュなど、多彩で瞬発的な動作が求められる競技です。

柔軟性が高いことは肩や股関節、手首、背骨の可動域を確保するうえで有利ですが、柔軟性だけでは正確なショットや動作安定性、怪我予防にはつながりません。

重要なのは、柔軟性を正確に制御して力に変換できるかです。

1. 柔軟性の利点と注意点

柔軟性のメリット

  • 肩や手首、股関節を広く動かせるため、サーブやスマッシュの可動域を最大化
  • スプリットステップや急停止、方向転換で柔軟な関節が衝撃を吸収

注意点

  • 関節を自由に動かせても、筋力や神経制御が不足すると安定性が低下
  • 急停止やサイドステップ、ラリー中の方向転換で膝や股関節に過負荷がかかる

2. コントロールできない主な原因

① 筋力・安定性不足

  • 股関節や膝、肩甲骨周囲の安定性が低いと、サーブやストロークで力を効率よく伝えられない
  • 急停止やジャンプショット時に関節や筋肉に不自然な負荷がかかる

② 固有受容感覚(プロプリオセプション)の不足

  • 関節や筋肉の位置感覚が不正確だと、フットワークやスプリットステップ、ラリー中のステップで不安定
  • ボールへの反応やタイミングがずれる

③ 神経系の協調性不足

  • 柔軟性のある筋肉を瞬時に動かす神経制御が不足すると、サーブやボレーの精度が低下
  • 柔軟性だけでは、高速での動作を安定して行えない

3. パフォーマンスへの影響

  • フットワークの安定性が低下し、素早いステップができない
  • サーブやストロークの精度・パワーが低下
  • 急停止や方向転換で膝・足首に負荷がかかりやすい
  • 肩・腰・膝の慢性疲労や怪我リスク増

4. 専門的な対策法

① 筋力・安定性トレーニング

  • スロースクワット・ランジ:股関節や膝の安定性を強化
  • 体幹・肩甲骨周囲の安定性エクササイズ:スイング動作で関節を安定
  • 片足立ちやバランスボード:フットワーク中の神経制御と筋力を同時に強化

② プロプリオセプション(固有感覚)トレーニング

  • 片足立ちでラケットを持ったまま軽く前後左右に動く
  • スプリットステップやジャンプ着地のコントロール練習
  • 不安定な地面でボールタッチやキャッチを取り入れ、関節位置感覚を養う

③ 動的コントロールの練習(力加減も意識)

  • 可動域フルレンジでスロー動作を行い、柔軟性を制御
  • サーブ・ストローク・ボレー動作で力の強弱を意識
  • 段階的にスピードや強度を上げ、ラリーや試合速度でも安定した動作を獲得

5. 補足ポイント

  • 柔軟性は「可動域の余裕」として重要ですが、筋力・安定性・神経制御とセットで使うことが安全かつ効果的
  • 低負荷・スロー・可動域意識から開始し、慣れてきたらスピードや強度を上げる
  • 力加減を意識することで、ラリーやサーブでも柔軟性を最大限に活かした安定動作が可能

6. まとめ

学生テニスにおいて、柔軟性だけではサーブ・ストローク・フットワークの精度や怪我予防は不十分です。

重要なのは、柔軟性を筋力・安定性・神経制御で正確に制御できるかです。

  • 筋力・安定性トレーニングで肩・股関節・膝を守る
  • プロプリオセプションで関節位置感覚を高める
  • 動的コントロール練習で力加減も含め柔軟性を活かす

この3つを組み合わせることで、柔軟性を安全かつ実戦的にパフォーマンスへ変換できます。